免疫染色の手技 
 モノクローナル抗体やポリクローナル抗体を用いた免疫染色は、研究だけでなく病理診断においても欠かせない技術です。われわれの研究室では、パラフィン切片や凍結切片、培養細胞などに対して酵素抗体法や蛍光抗体法を用いて免疫染色を行っています。パラフィン切片に対する免疫染色については、最適の染色結果が得られるよう、様々な抗原賦活法を行っております。
(テクニカルレポート:J Clin Exp Hematop, 2017学術リポジトリ, 2013
  パラフィン切片に対する多重免疫染色の例
CD1a陽性のランゲルハンス細胞(Fast Red TR:赤色)、CD163陽性のマクロファージ(Fast Blue BB salt:青色)、Ki-67陽性の増殖細胞(DAB:茶色)が観察される。
 
   パラフィン切片に対する多重免疫染色の例
Iba1陽性のマクロファージ(DAB:茶色)、CD163陽性のマクロファージ:(HistoGreen:緑色)、核(ヘマトキシリン:紫色)が観察される。
パラフィン切片(セルブロック)に対する蛍光多重染色の例
Cytokeratin陽性の癌細胞(Alexa Fluor 546赤色)、CD204陽性のマクロファージ(Alexa Fluor 488:緑色)、核(DAPI:青色)が観察される。
 採取した①ヒト・各種動物の新鮮組織を②10%中性緩衝ホルマリン固定液に入れ、タンパク質などを安定させ、自己融解による腐敗をおさえます。固定が終わった組織を③密閉式自動固定包埋装置に入れ、脱水・脱脂・パラフィン浸透を行います。その後④パラフィン包埋ブロック作製装置を用いて組織の包埋を行い、冷却し、パラフィンブロックを作製します。これを⑤ミクロトームにセットして薄切し、3μm程度のパラフィン切片を作製します。この切片を⑥水に浮かべてスライドグラスに拾い、お湯で伸展し、パラフィン伸展器上で乾燥させスライドグラスに張り付けます。乾燥した切片は目的に応じて⑦HE染色、特殊染色、免疫染色などを行います。染色が終わると⑧自動封入装置を用いてカバーグラスで封入し、組織標本が完成します。組織標本を⑨生物顕微鏡で観察し、必要に応じてデジタル写真の撮影も行います。
 日本病理精度保証機構、病理技術研究会、実験病理組織技術研究会が主催する標本作製・染色技術の外部精度管理調査に積極的に参加することで外部からの意見・評価を取り入れ、標本作製技術の向上に努めています。