日程

Journal Club

Progress report

(8:30〜9:30)

(9:30〜12:00)

2011年(平成23年)

Group-1

Group-2
12月27日(火)
  • 担当者:塚本 博丈
  • 論文:Senescence surveillance of pre-malignant hepatocytes limits liver cancer development
    Tae-Won Kang, et al.
    Nature 479: 547-551, 2011(Nov.)
  • 要約:がん遺伝子の異常な活性化が起こると、正常細胞は細胞老化プログラムに入ることにより、細胞周期が停止した状態をとることがあり、これは in vivo で腫瘍発生を阻む重要なメカニズムのひとつである。老化した細胞はさまざまなサイトカインや増殖因子の分泌によって環境と連絡し合っているが、このような「分泌性表現型」は腫瘍発生促進作用や抗腫瘍発生作用を持つ場合があることが報告されている。筆者らは、正常なマウス肝細胞で、がん遺伝子Nras G12Vの発現によって細胞老化が起こることを in vivo で実証した。このマウスモデルを詳しく解析したところ、こうした前がん性老化肝細胞はケモカインとサイトカインを分泌し、免疫系によって除去されることが見出された。「老化監視」と名付けられたこの除去機構は、CD4+ T細胞を介した獲得免疫応答に依存しておこる。一方、CD4+T細胞の欠損などにより、前がん性老化肝細胞の免疫監視がうまく働かない場合には、マウスに肝細胞がんが生じることから、この老化監視が in vivo での腫瘍抑制に重要であることが明らかになった。これらの結果と一致して、肝細胞での Nras G12V の発現を引き金としてがん遺伝子による老化が誘導されたマウスでは、ras特異的Th1細胞が検出された。また、CD4+ T細胞が老化肝細胞の除去を行うには、単球/マクロファージが必要なこともわかった。これらの結果は、CD4+T細胞を介した免疫システムが、老化を介する抗腫瘍障壁の重要な役割を担うことを示している。さらに、本論文において、細胞の老化プログラムが、前がん性老化細胞が発現する抗原に対する特異的免疫応答の開始によって腫瘍免疫監視にかかわるという仕組みが新たに証明された。
  • 千住
  • 池田
  • 高松
  • 冨田
  • 羽賀
  • 湯野
12月16日(金)
  • 担当者:高松 孝太郎
  • 論文:Distinct an Non-Redundant Roles of Microglia and Myeloid Subsets in Mouse Models of Alzheimer's Disease
    Alexander Midner, et al.
    The Journal of Neuroscience 31: 11159-11171, 2011(Aug.)
  • 要約:単核貪食細胞は、アルツハイマー病の病態において重要な役割を果たすと考えられているが、ミクログリア、骨髄由来単核球、および血管周囲マクロファージ、それぞれが持つ固有の役割に関しては不明である。本論文では、単核貪食細胞のアルツハイマー病における時間的、空間的役割について解明するために、異なるコンパートメントからのミエロイド細胞サブセットを、異なるアルツハイマー病モデルマウス(APPswe/PS1, APPswe, およびAPP23 mice)において病態を検討している。彼らは、Chemokine receptor 2(CCR2)を発現するミエロイド細胞が、脳実質βアミロイド(Aβ)に優先的に近づくことを示した。しかし予想とは異なり、ミクログリアの機能不全、および脳実質における骨髄由来貪食細胞の欠如は、アルツハイマー病モデルマウス脳における病理所見、およびアミロイドプラーク量に関与しなかった。対照的に、血管周囲ミエロイド細胞におけるCCR2欠損は、βアミロイドのクリアランスを劇的に減少させ、血管周囲Aβの蓄積を増大させたが、脳実質のプラーク量に影響を及ぼさなかった。これらのデータは、CCR2発現ミエロイド細胞サブセットが、それぞれ固有の役割を有するという見解を支持するものであり、アルツハイマー病の治療のターゲットとなりうることが示唆された。
  • 塚本
  • 木庭
  • 西方
  • 矢津田
  • 黒田
12月9日(金)
  • 担当者:真崎 雄一
  • 論文:Tumor Entrained Neutrophils Inhibit Seeding in the Premetastatic Lung
    Zvi Granot, et al.
    Cancer Cell 20: 300-314, 2011(Sep.)
  • 要約:腫瘍が転移する際には、骨髄由来の細胞が、転移組織に浸潤することが知られている。今回、著者らは、マウスの乳がんモデルにおいて、腫瘍細胞が転移組織である肺に到達する前に、好中球が浸潤していることを明らかにした。腫瘍によって生じた好中球は、H2O2を産生することによって、腫瘍細胞のseedingを抑えた。また、好中球が、このように腫瘍に対して抑制効果を持つためには、腫瘍細胞によって産生されたCCL2が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。さらに、このような腫瘍によって生じた好中球は、健常人には存在せず、外科的切除をする前の乳がん患者の末梢血に存在することも明らかとなった。このように、腫瘍によって産生された因子は、原発巣で、腫瘍の進行を手助けしているにも関わらず、転移組織では、好中球による腫瘍の抑制機能を引き起こしていることが明らかとなった。
  • 冨田
  • 羽賀
  • 湯野
  • 池田
  • 高松
12月2日(金)
  • 担当者:池田 徳典
  • 論文:Interleukin-17C Promotes Th17 Responses and Autoimmune Disease via Interleukin-17 Receptor E
    Chang SH, et al.
    Immunity 35: 611-621, 2011(Oct.)
  • 要約:
  • 入江
  • 矢津田
  • 黒田
  • 木庭
  • 西方
11月25日(金)
  • 千住
  • 池田
  • 高松
  • 冨田
  • 羽賀
  • 湯野
11月18日(金)
  • 担当者:矢津田 旬二
  • 論文:T Cell Surveillance of Ongogene-Induced Prostate Cancer Is Impeded by T Cell-Derived TGF-β1 Cytokine
    Moses K. Donkor, et al.
    Immunity 35: 123-134, 2011(July)
  • 要約:T細胞における免疫寛容の誘導は多くの腫瘍で起きており、腫瘍が免疫系により排除されない原因と考えられている。サイトカインTGF-βの産生が腫瘍に対する免疫抑制と関連付けられているが、TGF-βがT細胞を機能不全に導く細胞内メカニズムは不明である。腫瘍の増大は獲得免疫系では抑制されず、腫瘍の所属リンパ節から採取したT細胞のTGF-βシグナル増強が関係していることを、著者らは本論文で前立腺がんのトランスジェニックマウスモデルを用いて示した。T細胞のTGF-βシグナル伝達を阻害することで、腫瘍抗原特異的T細胞の反応は増強し、腫瘍の増大を抑制した。驚くべきことに、制御性T細胞ではなくてT細胞全体のTGF-βシグナル伝達を除去することで、T細胞の細胞傷害活性を強め、腫瘍の増大と転移を抑制した。これらの知見により、腫瘍が産生するTGF-βとは別に、T細胞が産生するTGF-βが、腫瘍の免疫監視からの回避に不可欠であることが明らかになった。
  • 塚本
  • 木庭
  • 西方
  • 矢津田
  • 黒田
11月11日(金)
  • 担当者:黒田 泰弘
  • 論文:Forced Expression of HLA-DM at the Surface of Dendritic Cells Increases Loading of Synthetic Peptides on MHC Class II Molecules and Modulates T Cell Responses
    Abdul Mohammad Pazeshki, et al.
    The Journal of Immunology 187: 74-81, 2011 (July)
  • 要約:癌抗原由来のCD4、CD8T細胞エピトープを負荷させた樹状細胞の養子移入は、癌細胞の免疫治療において有望な方法の一つである。筆者らは治療効果のあるMHCクラスII分子と合成ペプチドの複合体を増加させる実験を試み、リソソームに移行させるシグナルを欠損させたHLA-DMの変異体(DMY)を用いて、細胞表面にHLA-DMを蓄積させた。HLA-DR+細胞にDMYを遺伝子導入すると、外から培養液に加えたHA307-318ペプチドの付加と、HA特異的なT細胞を活性化するような刺激が増加した。また、ヒトとマウスの樹状細胞にDMY遺伝子を導入すると、DMYはそれぞれの癌抗原由来gp100174-190ペプチドとHEL48-61ペプチドのHLAクラスII分子複合体を増加した。興味あることに、抗原提示細胞の細胞表面にDMYを発現させるとTh1へ分化した。最後に、筆者らはDMY+とDMY-とでは、ペプチド-MHCクラスII分子複合体の微小な構造の差をもたらすことを発見した。これらをまとめると、樹状細胞の形質膜上にHLA-DMYを過剰発現させることにより、細胞ワクチンに用いる樹状細胞のCD4T細胞エピトープの提示が質的、量的に変化して、癌治療効果が改善することが期待される。
  • 冨田
  • 羽賀
  • 湯野
  • 池田
  • 高松
11月4日(金)
  • 担当者:入江 厚
  • 論文:Mechanisms of antigen presentation to T cells in murine graft-vs-host disease: crosspresentation and the appearance of cross-presentation
    Xiaojian Wang, et al.
    Blood Prepublished online September 30, 2011
  • 要約:宿主の抗原提示細胞(APC)は、宿主のマイナー組織適合抗原(miHA)をドナーのCD8陽性T細胞に直接提示して、移植片対宿主病(GVHD)を引き起こす。しかし移植後、宿主のAPCがドナーのAPCに置き換えられてからも、APCの刺激によりCD8陽性T細胞が病原性を発揮するためには、ドナーAPCが宿主のmiHAをクロスプレゼンテーションする必要がある。ドナーAPCがMHC-I-であると、CD8陽性T細胞によるGVHDの症状が軽くなることは、これを支持するものである。著者らは、MHC-I Kbに提示されることが知られているmiHAを発現するマウスと、Kbを欠損するマウスとを交配し、そのmiHAが宿主のAPCによって直接提示されることがないような系を用いてクロスプレゼンテーションの解析を行った。その結果、miHAを発現する細胞が、血球系であれ非血球系であれ、クロスプライミングは驚くほど有効であることがわかった。クロスプライムされたCD8陽性T細胞は、細胞傷害性を有し、かつIFN-γを産生した。CD8陽性T細胞は、ドナーのCD11c+細胞によってのみ活性化され、I型IFNとCD40Lの刺激があると最も効率よくクロスプライミングされた。ドナーAPCのいずれがmiHAを取り込むか調べたところ、驚いたことに、MHC-I-ペプチド複合体を含む大量の膜タンパク質が、照射された宿主からドナーの樹状細胞(DC)やその他の細胞に輸送されていた。宿主のMHC-I-ペプチド複合体を取り込んだドナーDCは、そのペプチドに特異的なT細胞を強く活性化した。本研究により、GVHDの治療に役立つ新たな標的が同定されるとともに、ドナーAPCが宿主に反応するT細胞を活性化する新たなメカニズムが明らかとなった。
  • 入江
  • 矢津田
  • 黒田
  • 木庭
  • 西方
10月28日(金)
  • 担当者:西方 龍太郎
  • 論文:Different patterns of peripheral migration by memory CD4+ and CD8+ T cells
    Thomas Gebhardt, et al.
    Nature 477: 216-219, 2011(Sep)
  • 要約:皮膚などの末梢組織の局所感染により、感染防御に働くT細胞応答のプライミングが起こる。活性化したT細胞は、所属リンパ節で組織への遊走を誘導するためのインプリンティングを受け、その結果、局所的および全身的な防御を与えるメモリーT細胞が生じる。移動性および常在性のメモリー T細胞の組み合わせが、特に体内への病原体の侵入部位となる皮膚や粘膜の表層部においては、長期にわたる末梢組織における感染免疫の成立に寄与していると考えられている。T細胞免疫は、CD4+ヘルパーT細胞とCD8+キラー T細胞により構成されている。しかしながら、これらのサブセットにおける、末梢の免疫監視に関与する移動性をもつ集団を形成する能力、あるいは局所感染に重要な個々の常在性の集団を形成する能力についての違いについては調べられていない。今回著者らはマウスを用いて、単純ヘルペスウイルスによる皮膚感染後のメモリーCD4+T細胞およびCD8+T細胞の遊走能と組織局在における重要な違いを明らかにしている。感染から回復すると、皮膚には2種類の異なるウイルス特異的メモリー T細胞サブセットが含まれていた。一つは表皮に常在し、最初の感染部位にほぼ限定された動きの遅いCD8+T細胞集団と、もう一つは、より幅広い再循環パターンの一環として真皮を通って速やかに移動する活動的なCD4+T細胞集団である。再循環しているCD8+T細胞と比較して、CD4+TEM細胞にはホーミング分子の独特な発現パターンがあり、CD4+TEM細胞は、優先的に炎症部位へ遊走する。これらの結果は、CD4+T細胞 およびCD8+T細胞 サブセットについて、今まで見逃されてきた機能的な違いを明らかにしている。
  • 千住
  • 池田
  • 高松
  • 冨田
  • 羽賀
  • 湯野
10月21日(金)
  • 担当者:冨田 雄介
  • 論文:A human memory T cell subset with stem cell-like properties
    Gattinoni L, et al.
    Nature medicine 17: 1290-1297, 2011(Sep)
  • 要約:免疫学的記憶は、抗原暴露の際にエフェクター細胞に分化することができる、幹細胞様の自己複製能を有するリンパ球に依存すると考えられている。著者らは、高い自己複製能を有し、セントラル・メモリー、エフェクター・メモリーおよびエフェクター細胞に分化することができる多分化能を有する、長期間生存する幹細胞様T細胞分画を同定した。これらの細胞は、CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+、CD27+、CD28+、およびIL7RαのナイーブT細胞の特徴を有する分画に存在した。しかし、同時にCD95、IL2Rβ、CDCR3およびLFA-1を強く発現し、メモリー細胞の様々な特徴を示した。既知のメモリー細胞分画と比較し、著者らが同定した分画のリンパ球は増殖能が高く、免疫不全マウス内での長期生存していた。さらに、この実験系において、他のリンパ球分画よりもすぐれた抗腫瘍効果を示した。今回著者らによるヒト幹細胞用メモリーT細胞分画の同定は、ワクチンやT細胞療法の治療戦略に直結した影響を及ぼす発見である。
  • 塚本
  • 木庭
  • 西方
  • 矢津田
  • 黒田
10月14日(金)
  • 担当者:湯野 晃
  • 論文:Autocrine IL-2 is required for secondary population expansion of CD8+ memory T cells
    Sonia Feau, et al.
    Nature Immunology 12: 908-913, 2011(Sep)
  • 要約:CD8陽性ナイーブT細胞のプライミングとメモリーT細胞の産生におけるCD4陽性T細胞の役割について2つの理論が議論されてきた。一つは分泌されたIL-2のパラクリン作用であり、もう一つはCD40-CD40Lを介したAPCの活性化である。著者らはin vivo においてCD8陽性メモリーT細胞の産生に必要なIL-2の供給源がCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、DCのいずれであるのかについて検討を行った。その結果、CD4陽性T細胞やDCよりもむしろCD8陽性T細胞が産生するIL-2が重要であることを発見した。IL-2遺伝子を標的破壊されたCD4陽性T細胞は、CD40Lを介したシグナルを伝達する場合にのみ、CD8陽性メモリーT細胞の産生を助けることができた。つまりCD4陽性T細胞はCD40に依存したメカニズムでAPCを活性化することにより、CD8陽性T細胞によるIL-2のオートクリンな産生を助けており、その結果としてCD8陽性メモリーT細胞が産生される。
  • 冨田
  • 羽賀
  • 湯野
  • 池田
  • 高松
10月7日(金)
  • 担当者:塚本 博丈
  • 論文:Myeloid-derived suppressor cells are implicated in regulating permissiveness for tumor metastasis during mouse gestation
    Laetitia A. Mauti, et al.
    The Journal of Clinical Investigation 121: 2794-2807, 2011(July)
  • 要約:妊娠の際に、父親由来のタンパク質を発現する胎児は母親の体内で拒絶されることなく育つ。これは母体内で父親由来のアロ抗原に対して免疫寛容が成立しているためと考えられる。この現象は生来我々が有している免疫寛容機構の代表的なものであり、このメカニズムの解明は、反復流産の治療、自己免疫応答の抑制、担癌固体における免疫抑制状態の回避への臨床応用のためのヒントとなり得るはずである。本論文で筆者らは、妊娠に伴う母子間免疫寛容が、がんの進行へ及ぼす影響を検討することにより、母体内で誘導される免疫抑制のメカニズムについて考察している。妊娠時にがんを患うケースは稀であるが、乳がんなどでは非妊娠の場合に比べ、妊娠、出産後の15年生存率が低いとの報告があり、この現象は母体の免疫抑制が関与する可能性も考えられている。筆者らは非妊娠の個体に比べて、妊娠時にはがん細胞の転移が促進されることをマウスの実験より示している。さらに、ミエロイド系抑制性細胞(MDSC)が母体内で増加していることを見出し、その標的となるNK細胞の細胞傷害性活性を強く抑制することを示した。これらの結果より、筆者らは、妊娠時におけるMDSCによるNK細胞の活性化抑制に伴う腫瘍転移の促進が、妊娠時のがんの予後不良の原因となる可能性を示唆している。妊娠時の母子間免疫寛容において、NK細胞の活性化が抑制されていることは既に報告されているが、本論文では新たに、MDSCによるNK細胞の活性化抑制が、母子間の免疫寛容に寄与している可能性を提唱している。

  • 入江
  • 矢津田
  • 黒田

  • 木庭
  • 西方