日程
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Journal Club
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Progress report
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(8:30〜9:30)
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(9:30〜12:00)
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2011年(平成23年)
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Group-1
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Group-2
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9月30日(金) |
- 担当者:木庭 千尋
- 論文:Tumor-derived macrophage migration inhibitory factor modulates the biology of head and neck cancer cells via neutrophil activation
Claudia A. Dumitru, et al.
International Journal of Cancer 129: 859-869, 2011(Aug)
- 要約:マクロファージ遊走阻止因子(MIF)は炎症性サイトカインで、癌細胞の増殖および転移に関与する。しかし、MIFがどのようなメカニズムで腫瘍の発生および進行に影響を与えているかは解明されていない。本研究の目的は、ヒトの頭頸部癌(HNC)において腫瘍由来のMIFが好中球に与える影響と、腫瘍細胞へのフィードバック作用を明らかにすることである。本研究で著者らは、in vitro でHNC細胞と好中球の相互作用を観察するモデルを実験に用いた。さらに、好中球の浸潤と治療のパラメーターに関して、HNC患者の組織でのMIFの発現を検出した。本研究の結果として、腫瘍由来のMIFの発現量に比例して、好中球がHNC組織内に浸潤することを示した。腫瘍由来のMIFの発現が強くなると、リンパ節転移が増加し、HNC患者の生存期間を短縮することが明らかとなった。in vitroでは、MIFはCXCR2依存のケモタキシスの誘導により、好中球の機能を調整し、好中球の生存を強め、CCL4とMMP9の分泌を促進する。さらに、HNC細胞の遊走を強める腫瘍由来のMIFで、好中球は活性化する。著者らの結論として、腫瘍由来のMIFが好中球に作用し、さらに腫瘍の進行に影響することを示した。
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9月16日(金) |
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9月9日(金) |
- 担当者:真崎 雄一
- 論文:CCL2 recruits inflammatory monocytes to facilitate breast-tumour metastasis
Qian, B. et al.
Nature 475: 222-225, 2011 (July)
- 要約:マクロファージは、腫瘍の微小環境に多くに見られ、腫瘍の悪性度を高める。転移部では、転移部に浸潤してくるマクロファージの細胞集団が、腫瘍細胞の血管外遊出、シーディング、増殖を促していることが報告されている。今回、著者らは、この転移に関わるマクロファージが、Gr1陽性の炎症性単球由来の細胞であることを示した。マウスの乳がんモデルにおいて、転移巣である肺では、原発巣である乳腫瘍部と比べ、炎症性単球が多くみられた。また、同様の結果が、ヒトの乳腫瘍細胞及び炎症性単球を使ったマウスの肺転移モデルにおいても見られた。これらの炎症性単球には、CCR2(ケモカインCCL2のレセプター)が発現しており、炎症性単球へ転移部への集積には、その後に起こるマクロファージの集積や転移性腫瘍細胞との相互作用と同様、腫瘍細胞や間質で合成されたCCL2に依存していることが明らかとなった。CCL2-CCR2シグナルを阻害すると、炎症性単球の浸潤が抑えられ、その結果、転移が抑制され坦癌マウスの生存期間も延びた。また、腫瘍細胞由来のCCL2を除くと、転移に伴うシーディングが抑えられた。さらに、炎症性単球が産生する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が、腫瘍細胞の血管外遊出に必要であること。CCL2の発現とマクロファージの浸潤は、ヒトの乳がんで予後不良と転移性疾患と関連していることも明らかになった。これらの結果は、臨床的に関連していると言われていたメカニズムを明らかにしたと共に、転移性乳がん治療の新たな標的を示している。
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9月2日(金) |
- 担当者:高松 孝太郎
- 論文:CX3CR1 modulates microglial activation and protects against plaque-independent cognitive deficits in a mouse model of Alzheimer's disease
Cho SH, et al.
The Journal of Biological Chemistry , 2011(Jul)
- 要約:アルツハイマー病の認知機能障害に、ミクログリアの異常な活性化が関与することが示唆されているが、その分子メカニズムに関しては解明されていない。神経細胞とミクログリア間のコミュニケーションに関与するフラクタルカイン・シグナリングは、アルツハイマー病患者脳で減弱し、βアミロイドによって抑制される。ミクログリアに存在するフラクタルカインレセプターであるCX3CR1が、βアミロイドプラークの蓄積を抑制することが報告されているが、その機能的な効果を検討した報告はない。本論文では、CX3CR1を欠損させることによりアルツハイマー病に関連したニューロン障害、認知機能障害が増悪することが示された。そのメカニズムは、サイトカイン量の増加に関連しており、アミロイドプラーク量は関与していなかった。ヒトアミロイド前駆体タンパク質(hAPP)を過剰発現したトランスジェニックマウスでは、CX3CR1を欠損させるとタウ病理所見が増悪、中枢神経に豊富に存在するカルシウム結合タンパク質であるカルビンディンが歯状回で減少した。歯状回におけるカルビンディン量は、TNF-α、IL-6と負の相関関係にあり、これらの炎症性サイトカインが神経毒性を及ぼしていると考えられる。またCX3CR1欠損は、記憶保持受動的回避テストと新規オブジェクト認識テストに障害を及ぼし、新規オブジェクト認識テストではIL-6レベルが障害に関連していた。これらの結果は、アルツハイマー病の認知機能障害に対して、CX3CR1パスウェイが保護的に働いていることを示すものである。
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8月26日(金) |
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8月19日(金) |
- 担当者:矢津田 旬二
- 論文:Broad antigenic coverage induced by vaccination with virus-based cDNA libraries cures established tumors
Timothy Kottke, et al.
Nature Medicine 17: 854-859, 2011(Jun)
- 要約:効果的ながん免疫療法には、強力な免疫活性化が起こっている状況下で幅広い腫瘍関連抗原が放出されることが必要である。本論文は、マウスにヒト正常組織のcDNAライブラリーを高度に免疫刺激活性が強いウイルス・プラットフォームを用いて発現させることにより、cDNAライブラリーが得られたのと同じマウスの組織より発生した腫瘍を治療できることを示した。至適条件でないワクチン投与では腫瘍の免疫逃避が起こるが、免疫系から逃避した腫瘍細胞は別に開発されたウイルスを利用した免疫療法で容易に治療できる。この手法にはいくつかの重要な利点がある。cDNAライブラリーを使うと広いレパートリーの(未知の)腫瘍関連抗原が提示され、これは治療抵抗性変異体の出現を減らし、臨床で合理的な併用治療を行えるようになる。さらに、ウイルスベクターは静脈内投与により全身に送達されるので、腫瘍を標的とする必要がない。したがって、ウイルスに発現させた異種正常組織由来のcDNAライブラリーは、これまで免疫療法やウイルス療法の有効性を妨げてきた重要な問題点の多くに対処できる、がん治療の新しいパラダイムを提示するものである。
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8月12日(金) |
- 担当者:黒田 泰弘
- 論文:Prevention of type 1 diabetes in mice by tolerogenic vaccination with a strong agonist insulin mimetope
The Journal of Experimental Medicine 208: 1501-1510, 2011(June)
- 要約:1型糖尿病は、T細胞の自己免疫反応により、膵臓β細胞が破壊されることにより発生する。インスリンは自己免疫反応の、標的自己抗原の一つである。NODマウスにおいて糖尿病を起こす、自己反応性 T細胞クローンが認識するインスリンのエピトープは、NODマウスが発現するMHCクラスII 分子であるI-Ag7分子との親和性が弱く、ペプチドMHC複合体のT細胞刺激活性は弱い。この論文は、野生型インスリンペプチドのp9に1アミノ酸置換を施した、強いアゴニスト活性のあるインスリンmimetopeの投与により、生体内でナイーブT細胞からFOXP3陽性制御性T細胞が誘導され、1型糖尿病の発症を完全に予防できることを示した。一方、野生型インスリンエピトープには、そのような効果は観察されなかった。強いアゴニスト活性を持つインスリンmimetopeワクチンの接種による免疫寛容の誘導は、ヒトの1型糖尿病を防ぐための新しい方法となる可能性がある。
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8月5日(金) |
- 担当者:入江 厚
- 論文:Therapeutic enzyme deimmunization by combinatorial T-cell epitope removal using neutral drift
コンビナトリアル変異導入と中立スクリーニングによりT細胞エピトープ除去し、治療用酵素を脱免疫原性化する
Proc Natl Acad Sci. 108: 1272-1277, 2011
- 要約:がんやその他の治療への応用を目指して多くの異種酵素が研究されているが、免疫原性の問題があり臨床応用は限られている。この論文では、コンビナトリアル(組み合わせを全て網羅する)変異導入と、進化論の中立説の概念を取り入れたスクリーニングを、コンセンサス法によるT細胞エピトープの予測と組み合わせて、酵素活性と薬理的性質に影響を与えずにMHC-II結合能を低下させるアミノ酸配列を設計することにより、異種酵素の免疫原性をなくす新しい方法が紹介されている。大腸菌のL-アスパラギナーゼII(EcAII)は、唯一、反復投与が認められている非ヒト酵素であり、幼少期の急性リンパ腫(ALL)の治療に不可欠であるが、多くの患者で抗EcAII抗体による副作用が問題となっている。EcAIIのアミノ酸残基の12カ所について、コンビナトリアル変異導入を行ったライブラリーを中立的にスクリーニングして、1つのEcAII変異体を得た。その変異体は、コンセンサス法で予測されたT細胞エピトープ内に、(種間で)保存されていない4残基を含む、8つのアミノ酸残基置換を持ち、L-Asnの加水分解に対してKcat/KM=106M-1s-1という値を保持していた。さらに、この変異EcAIIを、ALLと関連するDRB1*0401 HLAトランスジェニックマウスに免疫したところ、T細胞応答は著しく減少し、抗EcAII抗体の濃度も対治療効果比で1/10に減っていた。このようなEcAIIの免疫原性の著明な減少は、臨床的にALLの治療につながるものと期待され、異種タンパク質の脱免疫原性に必要なアミノ酸残基置換を見出す中立スクリーニング法の大きな可能性を示すものである。
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7月22日(金) |
- 担当者:西方 龍太郎
- 論文:Herpesvirus entry mediator (TNFRSF14) regulates the persistence of T helper memory cell populations
The Journal of Experimental Medicine 208: 797-809, 2011(Apr.)
- 要約:メモリーTヘルパー細胞(Th細胞)は、病原体に対するホストの生体防御で重要な役割を担う。soluble decoy lymphotoxin βreceptor (LT-βR)-Fcは、LIGHTとHVEM、LIGHTとLT-βR、LT-αβとLT-βRの結合を阻害する。著者らは、このLT-βR-Fcが in vivo で抗原感作後にメモリーTh2細胞の蓄積を抑制し、これに相関して炎症反応が減少することを発見した。さらに、抗原特異的なHVEM欠損メモリーCD4T細胞は通常の抗原の再刺激後に起こる即時応答は正常であるが、その後のメモリーCD4 T細胞の維持ができないことを示した。また、HVEM欠損メモリーTh2細胞はPKBの活性化が減弱しており、HVEM欠損メモリーTh2細胞に恒常的に活性化したPKBを導入すると、メモリーTh2細胞の維持と抗原の再刺激後の炎症反応も回復することを示した。これは、Th2細胞に限ったことではなく、Th1細胞でも同様の結果であった。さらに、LIGHT欠損 T細胞は、HVEM欠損T細胞と同様の異常が見られ、これは、LIGHT-HVEMの相互作用がメモリーCD4 T細胞の維持に関与していることを示唆した。以上の結果より、この論文は、メモリーCD4 T細胞の維持におけるHVEMシグナルの重要性を示した。
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7月15日(金) |
- 担当者:冨田 雄介
- 論文:Autoimmune melanocyte destruction is required for robust CD8+ memory T cell respomses to mouse melanoma
The Journal of Clinical Investigation 121: 1797-1809, 2011(May)
- 要約:腫瘍免疫において、自己免疫現象を発症した患者の予後が改善することは以前からよく知られているが、この二つの現象(自己免疫現象と予後の改善)の関連性については正確には不明である。著者らは本研究で、自己免疫白斑現象が自己抗原(腫瘍抗原)を供給し、長期間持続する抗メラノーマ腫瘍効果を有するメモリーCD8陽性T細胞を誘導することに必須であることを発見した。まず、B16腫瘍を移植したマウスのCD4細胞を除去し、続いて腫瘍を切除することで約60%のマウスに自己免疫性の白斑が生じる。白斑を生じたマウスにおいて、メラノーマとメラノサイトの両方に共通する自己抗原に特異的なCD8陽性T細胞は、コントロールと比較し10倍多く存在した。また、白斑を生じたマウスのCD8陽性T細胞は、エフェクター・メモリーT細胞としての特徴を認めており、このことは持続的に抗原刺激が起こっていることを示唆していた。またメラノサイト欠損マウスでは、エフェクター・メモリーT細胞は誘導されなかったことから、メラノーマ特異的CD8陽性T細胞の維持に、メラノサイトの傷害が必要不可欠であることが示唆された。さらに、白斑に関連して誘導されたメモリーCD8陽性T細胞は、長期間メラノーマに対して抗腫瘍活性を有し、長期間の自己抗原暴露に対してもexhaustion(細胞疲労)の徴候は認めなかった。本研究は、メラノサイトの傷害が、長期間持続する抗腫瘍免疫が誘導されるか否かの重要な鍵となる事を示している。すなわち、正常組織の自己免疫による傷害が、抗腫瘍免疫を長期間持続させることを示した。
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7月8日(金) |
- 担当者:湯野 晃
- 論文:A role for interleukin-2 trans-presentation in dendritic cell-mediated T cell actovation in humans, as revealed by daclizumab therapy.
Nature Medicine 17: 604-609, 2011(May)
- 要約:成熟樹状細胞(mDC)によるCD25の発現とインターロイキン(IL-2)の産生は、以前の研究で報告されているが、これらの分子がどのようにT細胞の活性化に関与しているかについては不明である。我々は、CD25に対するヒト化モノクローナル抗体であるダクリズマブが多発性硬化症で起こる脳の炎症を抑制する機序を調べている際に、この薬剤がポリクローナルT細胞の活性化に及ぼす影響は限られているが、mDCによる抗原特異的T細胞の活性化を強く阻害することを見いだした。本論文では、mDC(および抗原で刺激されたT細胞)がmDCとT細胞の接触面に向かって、抗原特異的にIL-2を分泌することを示し、またmDCがそのCD25を、刺激されたT細胞にtrans に「貸し出す」ことによって、初期の高親和性IL-2シグナル伝達を促進し、これはその後に続くT細胞の増殖と抗原特異的エフェクターの発生に非常に重要であることを明らかにする。我々のデータは、DCを介したT細胞の活性化におけるIL-2の受容体系の働きについて、今まで知られていなかった機序を明らかにしている。
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