日程

Journal Club

Progress report

(8:30〜9:30)

(9:30〜12:30)

2007年(平成19年)

Group-1

Group-2

12月28日(金)
  • 担当者:井上 光弘
  • 論文:T cell-encoded CD80 and 4-1BBL induce auto- and transcostimulation, resulting in potent tumor rejection
    Matthias T Stephan et al.
    Nature Medicine 13: 1440-1449, 2007(Dec.)
  • 要約:腫瘍に対するT細胞の養子免疫療法には多大な可能性が秘められているが、腫瘍を排除するためには腫瘍が持つ免疫原性の低下や、局所の不利な微小環境を克服する必要がある。本論文は、T細胞レゼプターの共刺激シグナルのリガンドであるCD80および4-1BBリガンドの両方からcostimulatory signalsが与えられることにより、強力かつ局所的に抗腫瘍免疫応答が増強することを発見したものである。著者らは前立腺特異的膜抗原(PSMA)に対する抗体とT細胞レセプターのシグナルアダプター(ζchain)とのキメラ抗体を発現させたヒトT細胞にCD80および4-1BBリガンドを発現させて、前立腺癌細胞に対する反応を検討した。これら両方のリガンドを発現させたT細胞は、免疫不全マウスにおいて強い腫瘍拒絶効果を示した。また、これらのリガンドおよびレセプターはT細胞の活性化の際に、免疫シナプスにおいて相互に作用しており、また、これらのリガンドが発現したT細胞はその他のT細胞をも活性化することができた。さらにこれらのリガンドの効果はin vivoで腫瘍局所において抗原特異的に作用することも示された。共刺激リガンドをT細胞に付与するこの方法は、標的を絞った養子免疫移入療法の増強に利用できると考えられる。
  • 千住
  • 春田
  • 池田
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田

12月21日(金)

全体 Meeting
  • 担当者:横峰 和典
  • 論文:Gender disparity in liver cancer due to sex differences in MyD88-dependent IL-6 production.
    Nauger WE. et al.
    Science. 317: 121-124, 2007 (July)
    Regulation of spontaneous intestinal tumorigenesis through the adaptor protein MyD88.
    Rakoff-Nahoum S. et al.
    Science. 317: 124-127, 2007 (July)
  • 要約:ウイルス感染による肝癌や子宮頸癌、炎症性腸疾患における大腸癌発生など、慢性炎症によって癌発生のリスクが増大することは明らかとなっているが、その機序は依然として明らかではない。Naugerらは、マウスによるDEN負荷による肝癌発生モデルを利用し、DEN負荷によってKupffer細胞からToll like receptorのアダプター分子であるMyD88依存性にIL-6が分泌され、肝発癌にIL-6が関与していることを示した。この肝癌発生モデルは、ヒトのHCCと同様にオスによく発生するが、エストロゲンがKupffer細胞からのIL-6の分泌を抑制していることも明らかとなった。また、Rakoff-Nahoumらは、腸管に腫瘍が自然に発症するAPC-MinマウスモデルとMyD88ノックアウトマウスを利用し、MyD88を介したシグナル伝達経路が、APC-Minマウスにおける腸管の腫瘍発生に重要な役割を担っていることを明らかにした。これらの論文は、innate immunityによる慢性炎症が発癌の引き金となっていることを示した興味深い報告である。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永

12月7日(金)
  • 担当者:松永 雄亮
  • 論文:Stimulation of the intracellular bacterial sensor NOD2 programs dendritic cells to promote interleukin-17 production in human memory T cells.
    van Beelen AJ, et al.
    Immunity 27: 660-669, 2007 (Oct)
  • 要約:これまでの研究により、Th17細胞はアレルギー応答や自己免疫、細胞外増殖性細菌への感染防御などで中心的な役割を果たしていることが明らかとなってきた。しかしながら、樹状細胞(DC)が細菌感染防御に関わるTh17細胞を選択的に増殖促進させる機序は解明されていない。本論文では、細菌由来のムラミルジペプチド(muramyl dipeptide: MDP)の細胞内センサーであるNOD2(nucleotide-binding oligomerization domain protein 2)の刺激によりヒト単球由来DCが活性化され、メモリーT細胞におけるIL17の産生を促進することが示された。MDPとTLRリガンドをDCに曝露すると、DCによるIL23、IL1の産生が増強され、結果としてメモリーT細胞におけるIL17の産生が促進された。NOD2の変異をもつクローン病患者由来の単球由来DCをMDPとTLRリガンドに曝露したときには、DCにおけるIL23、IL1の産生増強、メモリーT細胞におけるIL17産生促進は認められなかった。以上より、ヒトにおけるTh17細胞を介した細菌感染防御は、細菌由来のMDPをNOD2により認識したDCによって調節されていることが示唆された。
  • 頼仲
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田
  • 春田
  • 池田

11月30日(金)
  • 担当者:林田 裕希
  • 論文:Disruption of E-Cadherin-Mediated Adhesion Induces a Functionally Distinct Pathway of Dendritic Cell Maturation.
    Aimin Jiang et al.
    Immunity 27: 610-624, 2007(Oct.)
  • 要約:微生物産物あるいは炎症性メディエーターへの曝露後の樹状細胞の成熟は、免疫応答を開始させる重要な役割を担っている。著者らは、安定状態(炎症シグナルがない状態)でもE-カドヘリンによる樹状細胞の接着状態が変化することにより、樹状細胞が成熟することを発見した。E-カドヘリンによる接着が選択的に解除されることにより、補助刺激分子、MHCクラスII、ケモカインレセプターなどのDC成熟過程の典型像がもたらされる。この過程の少なくとも一部はβ-カテニン経路の活性化を通じておこる。しかしながら、E-カドヘリン接着解除により誘導された成熟樹状細胞は、全く異なる転写プロフィールを示し、微生物産物刺激による成熟樹状細胞と異なり、免疫刺激性サイトカインを放出することができない。結果として、E-カドヘリン接着解除による成熟樹状細胞はin vivoにて、エフェクターT細胞に対抗する制御性T細胞を誘導する。E-カドヘリンによる成熟樹状細胞はin vivoにおいて寛容を引き起こし、steady-state “tolerogenic DCs”の解明に寄与するのかもしれない。
  • 入江
  • 平田
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上

11月16日(金)

 全体 Meeting

 
  • 担当者:頼仲 玉珍
  • 論文:Naive CD8+ T cells differentiate into protective memory-like cells after IL-2- anti- IL-2 complex treatment in vivo.
    Daisuke Kamimura and Michael J. Bevan
    J. Exp. Med. 204: 1803-1812, 2007(Aug. 6)
  • 要約:CTLの至適な免疫応答には、T細胞レセプター(TCR)、co-stimulatory分子とサイトカインからのシグナルを必要とするが、これらのシグナルがCTLの増殖、蓄積、効果発現およびmemory CTLへの分化に、どのような役割を果たしているのか分かっていない。最近、インタ-ロイキン(IL)2の中和モノクローナル抗体が、生体内でのIL-2の効果を増強することが報告された。著者らは、外来抗原によるTCR刺激が少ない状況で、CTLが増殖する際におけるIL-2シグナルの役割を調べた。IL-2シグナルはnaiveおよびmemory CTLの全てにSTAT5の活性化を誘導して、naiveCTLからmemory CTLへの分化を促進した。さらにIL-2-抗IL-2抗体複合体は、TCRのself-MHCへのアクセスが阻害された環境で、naiveCTLの増殖を誘発した。IL-2 で活性化されたCTLは、野生型マウスへの移入後、central memory表現型を維持して、致死的な細菌感染からマウスを守ることできた。しかし、IL-2-抗IL-2抗体複合体で誘導したmemory CTLは、抗原刺激で誘導されたmemory CTLと比較して、homeostatic proliferationとサイトカイン生産が不完全であった。これらの結果は、TCR刺激が少ない状況で強烈なIL-2シグナルがCTLに加わると、感染防御能を有するmemory CTLの分化を誘導できるにも関わらず、CTLの体内における全体的な適合性を保証できないことを示唆する。
  • 千住
  • 春田
  • 池田
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田

11月9日(金)
  • 担当者:池田 徳典
  • 論文:Elimination of antigen-presenting cells and autoreactive T cells by Fas contributes to prevention of autoimmunity.
    Peter B. Stranges et al.
    Immunity. 26(5): 629-41, 2007(May.)
  • 要約:Fas受容体は、T細胞にapoptosisを誘導する分子であり、T細胞の増殖を制御していると考えられてきた。これは、マウスやヒトにおいて、Fas受容体やそのligandが欠失した場合、過剰なリンパ球増殖や全身性自己免疫疾患が発生するという事実を根拠としている。しかしながら、Fas受容体が完全に欠失した場合において、T細胞以外の細胞が、自己免疫疾患の発症に寄与しているのか否かについては不明である。本研究は、マウスにおいて、正常な抗原提示細胞(Antigen presenting cells; APCs)では、抗原提示後に、Fas-FasL を介した系によりAPCsが排除されるのに対して、APCs特異的にFasを欠失させた場合には、全身性自己免疫疾患を発症することを示した。さらに、APCsにおけるFasの発現は、微生物によるpattern-recognition receptor(PRRs)からの刺激で増加することを確認した。また、T細胞特異的にFasを欠失させると、抗核抗体が出現し、全身性自己免疫疾患が発症することから、Fasが実際に自己反応性T細胞を制御していることが明らかとなった。以上のことから、Fasを介したAPCsの排除は、自己免疫反応を抑制する上で非常に重要な制御機構であり、さらに、慢性活動性自己反応性T細胞のFasを介した制御に連動していると考えられた。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永

11月2日(金)
  • 担当者:入江 厚
  • 論文:'Coreceptor tuning': cytokine signals transcriptionally tailor CD8 coreceptor expression to the self-specificity of the TCR.
    Jung-Hyun Park et al.
    Nature Immunology 8: 1049-1059, 2007(16 Sep.)
  • 要約:T細胞による免疫は、自己抗原を認識するが、自己反応性にはならないT細胞が長く生き続けることが必要である。このバランスがどのようにして達成されるかは、完全には理解されていない。本研究で著者らは、個々のT細胞のTCRが自己に対する特異性を持つように、CD8副受容体の発現を遺伝子のレベルで調節するような恒常性維持機構が存在することを見出した。この「副受容体のチューニング」は、サイトカイン刺激とTCR刺激の相互作用によってなされる。すなわち、IL-7や他の共通γ鎖サイトカインはCD8の発現を増加させ、それによりTCRの自己のリガンドに対する会合を昂進させるが、TCRからのシグナルは、共通γ鎖サイトカインによるシグナル伝達を抑制し、それによりCD8の発現を減少させる。このダイナミックな相互作用により、個々のCD8陽性T細胞は、自己のリガンドに対する会合を昂進させるが、しかし自己反応性にはならないような、絶妙な量のCD8を発現すると思われる。
  • 頼仲
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田
  • 春田
  • 池田

10月26日(金)

 全体 Meeting
  • 担当者:平田 真哉
  • 論文:Conversion of mature B cells into T cells by dedifferentiation to uncommitted progenitors
    Cesar Cobaleda et al.
    Nature 449: 473-477, 2007(27 Sep.)
  • 要約:一般に、細胞は成熟すると、未分化細胞には戻れないと考えられている。リンパ球系細胞においても、そのように考えられており、分化した成熟B細胞、形質細胞は他の細胞に分化することはないとされる。造血前駆細胞のB細胞系統への系統拘束と、成熟B細胞への分化は、Pax5(paired box gene 5)という転写因子に依存している。本論文は、conditionalに成熟B細胞でPax5を欠損する遺伝子改変マウスを作成することにより、末梢リンパ器官から得た成熟B細胞が骨髄においてin vivoで脱分化して初期の未拘束前駆細胞に戻り、TCRαを欠損したT細胞欠損マウスの胸腺でT細胞に分化することを示した。このB細胞由来T細胞は、免疫グロブリンのL鎖とH鎖に遺伝子再編成が認められるにもかかわらず、機能的なT細胞としての免疫反応を示した。成熟B細胞にPax5を欠失するマウスでも、進行性のリンパ腫が発生したが、遺伝子発現プロファイルより、この腫瘍は前駆細胞の腫瘍であることがわかった。したがって、後期のB細胞でPax5が完全に欠損するとリンパ腫の発生を惹起する可能性があるとともに、成熟した末梢B細胞は高度に分化しているにもかかわらず、強い可塑性を持つことが明らかとなった。
  • 入江
  • 平田
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上

10月19日(金)
  • 担当者:今井 克憲
  • 論文:Granzyme B and Perforin Are Important for Regulatory T Cell-Mediated Suppression of Tumor Clearance.
    Xuefang Cao. et al.
    Immunity 2007(Oct.)
  • 要約:Granzyme BはNK細胞やCD8+T細胞の、標的細胞に対する細胞傷害性の発現において重要な役割を果たしている。著者らは、Granzyme Bノックアウトマウスにおいて、wild typeに比べて移植した腫瘍細胞株が予想外により強く排除されることを発見した。naiveなregulatory T cell(Treg)にはGranzyme Bは発現していないが、腫瘍周囲のTregにはGranzyme Bが高発現しており、腫瘍周囲で活性化されたTregをGranzyme Bノックアウトマウスに養子移入する実験において、TregがGranzyme/perforin pathwayを介してNK/CD8+T細胞を傷害することによって、その抗腫瘍効果を抑制した。以上より、腫瘍細胞はTregにおけるGranzyme Bの発現を誘導し、このTregがGranzyme B / Perforinを用いてNK/CD8+T細胞を傷害し、その結果抗腫瘍免疫が抑制されることが示された。
  • 千住
  • 春田
  • 池田
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田

10月12日(金)
  • 担当者:福島 聡
  • 論文:Plasmacytoid dendritic cells sense self-DNA coupled with antimicrobial peptide.
    Lande R et al.
    Nature. 449: 564-569, 2007(Oct.)
  • 要約:形質細胞様樹状細胞(pDC)は、エンドソームのTLRを介してウイルスや細菌のDNAを感知し、1型IFNを産生する。pDCは、通常自己DNAには反応しない。ヒトの自己免疫疾患では、このような制限が働かなくなっている可能性が示唆されているが、その機構はまだ解明されていない。本論文は、ありふれた皮膚の自己免疫性疾患である乾癬で、抗菌ペプチドLL37(CAMP)がpDCの活性化を仲介する主要な因子であることを明らかにした。LL37は自己DNAに結合して、凝縮した集合体を形成することによって、不活性な自己DNAをIFN産生の強力な引き金に変化させる。この集合体はpDCのエンドサイトーシスの初期区画に輸送され、その内部に保持されて、TLR9活性化の引き金となる。このことは、自己DNAに対する自然免疫系寛容の破綻に、内因性の抗菌ペプチドが重要な役割を担っていることを明らかにし、この経路が乾癬における自己免疫現象を誘導する可能性を示唆するものである。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永