日程

Journal Club

Progress report

(8:30〜9:30)

(9:30〜12:30)

2008年(平成20年)

Group-1

Group-2
12月26日(金)
  • 担当者:冨田 雄介
  • 論文:Limited tumor infiltration by activated T effector cells restricts the therapeutic activity of regulatory T cell depletion against established melanoma.
    Sergio A. Quezada et al.
    J Exp Med. 205: 2125-38, 2008(Aug.25)
  • 要約:T細胞活性化をコントロールしている免疫抑制性チェックポイントの制御は、癌免疫療法に新しい治療法を提供する。CTLA-4ブロッカーは前臨床試験および臨床試験で有効であることが報告されているが、CD4+CD25+制御性T細胞(Treg)の除去療法は癌免疫治療を増強することができていない。著者らは、B16/BL6マウスメラノーマモデルを用い、腫瘍の移植前(予防モデル)と移植後(治療モデル)におけるTreg除去が腫瘍拒絶に与える影響について調べた。腫瘍移植後にTreg除去を行った場合、Treg除去が十分にできているにもかかわらず、また抗腫瘍活性を有するT細胞の活性化が生じているにもかかわらず、腫瘍拒絶を促進することはできなかった。しかし、著者らは腫瘍内へのエフェクターT細胞の浸潤が有意に低下し、腫瘍内におけるエフェクターT細胞/制御性T細胞比が有意に低下しており、このことが治療モデルにおいて腫瘍拒絶が起こらないことと関連していることを示した。最終的に、抗腫瘍活性はTreg存在下よりもTreg除去下においてより強く生じており、放射線照射した担癌マウスに抗CD25抗体投与後のリンパ球を養子免疫することで、CTLA-4ブロッカーとGvaxの併用療法に相乗効果をもたらし、腫瘍の拒絶を起こすことが可能であった。
    これらのデータは、抗CD25抗体によるTreg除去療法において、全身性のT細胞活性化と腫瘍拒絶の間には解離が生じていることを示しており、またすでに存在する腫瘍に対する新たな治療戦略のあり方について示唆するものである。
  • 千住
  • 池田
  • 春田
  • 林田
  • 冨田
12月19日(金)
  • 担当者:池田 徳典
  • 論文:Regional CNS responses to IFN-γdetermine lesion localization patterns during EAE pathogenesis.
    Jason R. Lees et al.
    J Exp Med. 205(11): 2633-42, 2008(Oct. 27)
  • 要約:多発性硬化症(MS)のモデルとされているExperimental autoimmune encephalomyelitis(EAE)では、脊髄主体の病変を呈し、MSで認められるような大脳、小脳における病変は殆ど認められない。この原因については、はっきりとしていなかったものの、IFN-γKOマウスにEAEを誘導した場合、脊髄ではなく、脳幹や小脳に病変が認められることが以前より知られていた。今回著者らは、EAEにおけるIFN-γが与える影響について、細胞移入実験を用いて検討を行った。主な実験内容は以下の通り。
    1) EAEを誘導したIFN-γKOマウス由来のTh1細胞を、WTマウスに移入する。
    2) EAEを誘導したWTマウスの由来のTh1細胞を、IFN-γR KOマウスに移入する。
    3) EAEを誘導したWTマウスとIFN-γKOマウス由来のTh1細胞を、WTマウスに共移入する。
    この結果、1), 2)では、脊髄を中心とした従来の病変ではなく、小脳や脳幹に病変が認められた。一方で、3)では、両者を同量共移入した場合に、それらの部位には病変が認められず、再び脊髄のみの病変が確認された。これらの結果からは、EAEでは、中枢神経のIFN-γに対する感受性の違いにより、脊髄中心に病変部位が生じることが示唆された。
    以上のような内容を、最近のEAE、MSに関する知見も交えて紹介する。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永
12月12日(金)
  • 免疫学会の報告会
  • 頼仲
  • 林田
  • 冨田
  • 池田
  • 春田
11月28日(金)
  • 担当者:頼仲 玉珍
  • 論文:Macrophage-Derived SPARC Bridges Tumor Cell-Extracellular Matrix Interactions toward Metastasis.
    Cancer Res. 68: 9050-9059, 2008(Nov.1)
  • 要約:遺伝的インプリンティング上皮間葉転換が生じる他に、がん細胞の転移には周囲の間質細胞との相互作用が必要である。SPARC(secreted protein acidic and rich in cysteine)は、細胞外マトリックス(ECM)の構築や細胞とECMの相互作用を制御するタンパク質で、細胞からECMに分泌される。また、SPARCの遺伝子発現と細胞の悪性度との間には相関がある。本論文では、SPARC欠損マウスと野生型マウスの、双方向の骨髄キメラを用いた実験から、炎症性細胞によるSPARCの産生が、静注による実験的な転移には不要だが、自然発生性の転移には必須であることが示された。炎症細胞に由来するSPARCは、がん細胞のαVβ5インテグリンを介したECMタンパク質上の移動を促した。さらに、RNAi法によりβ5インテグリンの発現を抑制すると、in vitroでの細胞運動とin vivoでの転移が減少した。以上の結果は、マクロファージに由来するSPARCが、インテグリンを介した浸潤性細胞の移動に作用して、がん細胞の転移に関与することを示す。
  • 入江
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上
11月21日(金)
  • 担当者:入江 厚
  • 論文:Equilibrium between Host and Cancer Caused by Effector T cells Killing Tumor Stroma
    Cancer Res. 68: 1563-1571, 2008(Mar.)
  • 要約:固形癌は、腫瘍間質に依存して増殖する。MHC拘束性の違いから、腫瘍間質に提示された腫瘍抗原を認識するが、腫瘍細胞は認識しないCTLを1回養子免疫すると、長期にわたって腫瘍の増殖が抑制された。ホストと腫瘍が定常状態になった後も、そのT細胞は存在し続け、骨髄性F4/80+あるいはGr1+間質細胞を破壊した。高親和性TCR四量体を用いて、間質細胞の一部が周囲の腫瘍細胞から腫瘍抗原を取り込むことを証明した。取り込まれた抗原により、間質細胞がCTLの標的になった。これらの骨髄性間質細胞は、免疫抑制能、血管新生能、そして食作用を有した。これらの細胞を除去すると、T細胞は活性化状態を保ち、血管新生は抑えられて、養分の吸収ができない腫瘍のサイズは変化しなかった。以上の発見は、腫瘍間質細胞を標的とするCTL養子免疫療法による、新たな癌治療法への道を開くものである。
  • 千住
  • 池田
  • 春田
  • 林田
  • 冨田
11月14日(金)
  • 担当者:林田 裕希
  • 論文:CTLA-4 Control over Foxp3+ Regulatory T Cell Function.
    Kajsa Wing et al.
    Science 322: 271-275, 2008(Oct.)
  • 要約:免疫系に内在するFoxp3を発現するCD4制御性T細胞(Treg)は、免疫自己寛容と、免疫恒常性の維持に必須のリンパ球である。今回著者らは、Treg特異的にCTLA-4を欠損させたマウスを作製すると、全身性のリンパ球増殖や致死的なT細胞性自己免疫疾患、および免疫グロブリンE(IgE)の過剰産生が起きることを発見した。このマウスは、同時に同系の癌細胞に対しても強い免疫応答を示した。Treg特異的なCTLA-4の欠損により、Tregの抑制機能はin vivoin vitroの両方で著明に低下していた。特に、Tregによる樹状細胞上のCD80とCD86に対する発現抑制効果が減弱していた。このように内在性Tregは、抗原提示細胞による他のT細胞の活性化能を減弱させることにより免疫応答を抑制しており、この作用にはCTLA-4が不可欠であると考えられた。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永
11月7日(金)
  • 癌学会の報告会
  • 頼仲
  • 林田
  • 冨田
  • 池田
  • 春田
10月31日(金)

全体Meeting

  • 担当者:真崎 雄一
  • 論文:Modulation of the antitumor immune response by complement.
    Markiewski, MM et al.
    Nature Immunology 9 (11) 2008 (Nov.)
  • 要約:補体が腫瘍の成長に、どのように関わっているのかについては、これまでのところ明らかになっていない。本研究で著者らは、腫瘍の微小環境でのC5aの生成が、抗腫瘍性のCD8陽性T細胞を介した反応を抑え、結果として、腫瘍の成長を促していることを明らかにした。C5aは、ミエロイド由来の抑制細胞(myeloid-derived suppressing cell: MDSC)の腫瘍部位への移動を促す一方で、CD8陽性T細胞の腫瘍に対する免疫反応を抑えていた。さらに、C5aによるMDSCの腫瘍に対する免疫抑制には、活性酸素や活性窒素の産生が関与していることも明らかになった。また、薬剤によってC5aレセプターをブロックすると、抗癌剤 パクリタキセルと同様に腫瘍の成長を抑えていた。このように、今回、補体を阻害することによって、癌に対して治療効果を示めすことが明らかになった。
  • 入江
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上
10月24日(金)
  • 担当者:福島 聡
  • 論文:Inhibition of dendritic cell differentiation and accumulation of myeloid-derived suppressor cells in cancer is regulated by S100A9 protein.
    Pingyan Cheng et al.
    J.Exp. Med. 205(10): 2235-2249, 2008(Sep.)
  • 要約:ミエロイド由来の抑制細胞(myeloid-derived suppressing cell: MDSC)の集積と樹状細胞分化の抑制は、癌における免疫学的異常の大きな問題のひとつであり、その結果癌に対する免疫応答の抑制につながる。しかしこの現象の分子メカニズムはまだ解明されていない。今回著者らはSTAT3で誘導されるミエロイド関連タンパク質であるS100A9が癌におけるMDSCの産生を増加させることを示した。S100A9を欠損したマウスでは抗腫瘍免疫応答が増強しており、移植した腫瘍を拒絶した。さらにその効果は野生型坦癌マウスのMDSCを移入すると解除された。S100A9を過剰発現させたES細胞、あるいはS100A9トランスジェニックマウスでは、DCあるいはマクロファージの分化が阻害され、MDSCの集積を来した。本研究は腫瘍が誘導するS100A9タンパク質がMDSCの集積にきわめて重要であり、癌における免疫学的異常の新しいメカニズムを明らかにするものである。
  • 千住
  • 池田
  • 春田
  • 林田
  • 冨田
10月17日(金)
  • 担当者:今井 克憲
  • 論文:Stat3 mediates myeloid cell-dependent tumor angiogenesis in mice.
    Maciej K. et al.
    J. Clin. Invest. 118(10): 3367-3377, 2008(Sep.)
  • 要約:近年、腫瘍の発育に重要な因子である腫瘍血管新生において、血球が重要な役割を果たしていることがわかってきた。特に骨髄由来で抗腫瘍免疫に対して抑制性に働くCD11b+Gr1+ myeloid-derived suppressor cells(MDSCs)が、この腫瘍血管新生を促進させるということが報告されている。今回著者らは、Stat3が、腫瘍細胞、血管内皮細胞、腫瘍間質に浸潤したMDSCsのクロストークを介して腫瘍血管新生を調節していることを示した。Stat3は癌細胞で高頻度に活性化しており、癌の増殖、浸潤に重要な役割を果たしていることが知られている。一方、免疫系においては、抗腫瘍免疫を抑制する働きが知られている。著者らは、腫瘍間質のMDSCsと腫瘍関連マクロファージ(TAM)ではStat3が活性化しており、これが下流のVEGFやbFGF等のangiogenic factorの発現を介して血管新生を促進することを示した。腫瘍やMDSCsにより産生されるStat3-regulated factorは、さらに腫瘍間質の血管内皮細胞におけるStat3を活性化し、その結果内皮細胞の進展能と血管新生が促進された。以上より、腫瘍やMDSCsにおけるStat3の活性化は、さらに血管内皮細胞のStat3の活性化を引き起こし、腫瘍と骨髄由来細胞、血管内皮細胞のクロストークによって腫瘍の血管新生が調節されていることが示された。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永
10月3日(金)
  • 担当者:井上 光弘
  • 論文:Immunogenicity of premalignant lesions is the primary cause of general cytotoxic T lymphocyte unresponsiveness.
    Willimsky, G. et al. 
    J.Exp. Med. 205(7): 1687-1700, 2008(June)
  • 要約:癌は、通常突発的に起こり、最初にクローナルな遺伝子異常が起こった後、腫瘍が臨床的に明らかとなるまでには、通常長期の潜在期間を有することが特徴である。大半の腫瘍がある段階で免疫反応を惹起するが、いつ、どのように癌が免疫機構を逃避するかについてはっきりした見解は得られていない。著者らは、過去にLoxP-Tagトランスジェニックマウスという自然発生癌モデルを確立し、このマウスはSV40T抗原(Tag)という抗原を有し、発育当初はストップカセットがアクティブプロモーターと癌遺伝子を分割しているためにサイレントであるが、ある時点で癌遺伝子が活性化し、腫瘍抗原としてTagを発現した癌が生じる。この抗原性を有した自然発生癌モデルにおいて、腫瘍抗原特異的なトレランスが、B細胞による最初の腫瘍抗原認識、および抗体産生とほぼ同時に起こるということが示された。本論文ではTagを発現した腫瘍を形成したLoxP-Tagマウスでは、2-3ヶ月の若い同マウスと比較してTag抗原特異的なCTL反応だけでなく、他の抗原に対する全般的なCTL反応も減弱していることが示され、さらに臨床的に明らかとなっていない前癌段階の腫瘍が発生した時点で、Tag特異的な抗体が産生され、この時点ですでにTag特異的なCTL反応は減弱していることが示された。またこれはTGFβ1レベルの上昇と未成熟骨髄細胞(iMCs)と定義されるCD11b/Gr-1陽性細胞 (myeloid-derived suppressor cells (inmatured myeloid cells); iMCs)の増加とも相関している。iMCsはその増殖と免疫抑制分子の産生によって直接CTL反応を抑制すると考えられている。しかし抗原性を有しない多数の腫瘍細胞が接種されたマウスにおいてもiMCsは増加するが、TGFβ1の血清レベルは正常であり、非特異的なCTL反応は減弱していなかった。
    著者らの結論は、(a)腫瘍抗原に対するトレランスは前癌段階に起こる。(b)腫瘍増殖までの長期の潜在期間はCTLによる増殖抑制の影響ではないと考えられる。(c)抗原性を有する腫瘍からの継続的な腫瘍抗原による刺激が、全般的なCTLの不応性を導びくと考えられる。腫瘍の大きさや、iMCs自体がCTLの不応性を導くのではない。というものである。このことは、なぜ強い免疫原性を有する腫瘍が進行増大するのかということを説明しうる。
  • 頼仲
  • 林田
  • 冨田
  • 池田
  • 春田