日程

Journal Club

Progress report

(8:30〜9:30)

(9:30〜12:30)

2008年(平成20年)

Group-1

Group-2
9月26日(金)
  • 担当者:松永 雄亮
  • 論文:Mincle is an ITAM-coupled activating receptor that senses damaged cells.
    Yamasaki S, et al.
    Nat. Immunol. 9: 1179-1188, 2008(Sep.)
  • 要約:Mincle(Macrophage-inducible C-type lectin)は、主にマクロファージに発現し、さまざまな刺激やストレスで発現が誘導されることが知られている。しかしながら、そのリガンドや機能は解明されていない。著者らは、Mincleは選択的にFcレセプターγ鎖に会合することで、マクロファージを活性化し炎症性サイトカインやケモカインの放出を促すことを明らかにした。さらに、Mincleを発現する細胞は死細胞共存下で活性化することを見いだし、死細胞から放出されるMincleのリガンドとしてSAP130を同定した。細胞死に対する生体応答にMincleが関与しているか否かを調べるために、マウスに放射線を照射し胸腺細胞の細胞死を誘導した。放射線照射による胸腺への好中球の浸潤は、Mincle抗体の投与により抑制された。これらの結果より、Mincleは大量の細胞死を感知し、傷害を受けた組織に好中球浸潤を動員する炎症性サイトカインの産生を促す、活性化受容体であることが示唆された。
  • 入江
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上
9月12日(金)

全体Meeting

  • 担当者:冨田 雄介
  • 論文:Peripheral CD8+ T cell tolerance to self-proteins is regulated proximally at the T cell receptor.
    Ryan M et al.
    Immunity 28: 662-674, 2008(May)
  • 要約:自己免疫疾患の発症を防ぐために、CD8陽性T細胞の免疫寛容は必要不可欠なものであるが、一方で腫瘍抗原の多くは過剰発現した正常な自己蛋白質であるため、 CD8陽性T細胞の免疫寛容は腫瘍抗原への免疫応答に多くの障害をもたらしている。そのため自己へのT細胞免疫寛容のシステムを解明することは、臨床で腫瘍抗原に対する免疫寛容を克服するための効果的な戦略を立てる際に有益となりうる。生体内でどのように免疫寛容が維持さかられているのかを解析するため、著者らは肝臓に胎生期から発癌性ウイルス蛋白を発現させ、自己腫瘍抗原(FMuLVgag epitope)と外来性のウイルス蛋白(Gp33 epitope )の、2つの異なる抗原ペプチドを認識するCD8陽性T細胞を産生する dual-T cell receptor (dual-TCR) トランスジェニックウスを作製した。dual-TCR T細胞は、末梢で自己抗原(FMuLVgag epitope)に遭遇しても免疫寛容を示すのに対し、これらの細胞はウイルス抗原(Gp33 epitope )特異的TCRを介して、ウイルス抗原に対し正常に応答した。さらにウイルス抗原刺激によって生じたT細胞増殖は、免疫寛容状態となっていたFMuLVgag反応性T細胞レセプターの機能を回復させ、抗腫瘍活性をも回復させた。
     これらの結果は、末梢でのCD8陽性T細胞の自己蛋白への免疫寛容が、細胞自体の不活性化により維持されているのではなく、自己反応性T細胞レセプター複合体の直下のシグナル伝達系で制御されていることを示唆しており、T細胞による養子免疫療法の代替戦略となりうる可能性を示唆している。
  • 千住
  • 池田
  • 春田
  • 林田
9月5日(金)
  • 担当者:池田 徳典
  • 論文:A critical function for transforming growth factor-b, interleukin 23 and proinflammatory cytokines in driving and modulating human TH-17 responses.
    Elisabetta Volpe et al.
    Nature Immunology 9: 650-657, 2008 (May)
  • 要約:ヒトのナイーブCD4陽性T細胞からTh17細胞への分化に関与する因子については、様々な報告がなされているものの、はっきりとした見解は得られていない。
    今回、著者らは、ヒトのTh17細胞の分化に、従来から重要と報告されていたIL-23や炎症性サイトカインであるIL-1βやIL-6に加え、TGF-βのTh17細胞の分化に及ぼす影響を検討した。
     ナイーブCD4陽性T細胞から、IL-23, IL-1β,IL-6だけでTh17細胞に分化させた場合と、これにTGF-βを加えた場合とで、IL-17産生量を比較した場合、前者においてIL-17の産生量が極端に低値であった。また、これらのサイトカインをいくつか組み合わせて、Th17細胞に分化させ、IL-17やIL-21, IL-22等のTh17細胞が産生するサイトカインの測定を行ったところ、その産生量に違いが認められた。
     このようなことから、TGF-βはTh17細胞の分化に重要であるとともに、分化に関与するサイトカインの組み合わせによって、Th17細胞の特徴が異なる可能性が示唆された。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永
8月29日(金)
  • 担当者:頼仲 玉珍
  • 論文:The Wilms' Tumor Antigen Is a Novel Target for Human CD4+ Regulatory T Cells: Implications for Immunotherapy.
    Cynthia Lehe et. al.
    Cancer Research 68: 6350-6359, 2008(Aug.)
  • 要約:抗腫瘍免疫の抑制に、Tregが重要な役割を演じていることが、明らかになりつつある。ウィルムス腫瘍抗原(WT1)は、いくつかのヒトの白血病で過剰発現して、白血病に対する免疫療法の標的として有望視されている。しかし、最近の研究により、WT1に特異的なCTLの誘導が、Tregsの存在により抑制されることが明らかとなっている。著者らが誘導したCD4+T細胞株およびクローンは、HLA-DRB1*0402により提示されたWT1-84(RYFKLSHLQMHSRKH)ペプチドを特異的に認識した。このT細胞株は、HLADRB1*04を有し、WT1抗原を発現している白血病細胞を認識した。また、Th2サイトカインを産生し、CD4+CD25+Foxp3+GITR+ CD127- のTreg表現型を持ち、細胞接触に依存することなく、アロT細胞の反応を抑制した。Tregの存在下におけるアロ反応性T細胞の活性化は、NK細胞,NKT細胞および CD8+T細胞の増殖を抑制し、NK/NKT細胞の細胞傷害活性を抑制したが、CD8+T細胞の細胞傷害活性は抑制しなかった。さらに、Tregの存在下でHLA-A*0201拘束性のWT1-126ペブチドによる刺激を受けたCTLは、非常に低い細胞傷害活性とIFNγ産生しか示さなかった。これらのTreg細胞クローンは、グランザイムBを生産して、WT1-84ペプチドをパルスした自己の抗原提示細胞にアポトーシスを誘導したが、アポトーシス抵抗性のHLA-DR4陽性白血病細胞にはアポトーシスを誘発しなかった。さらに重要なことに、8人のHLA-DR4+急性骨髄性白血病患者のうちの5人に, WT1-84特異的でinterleukin-5+/granzyme B+/Foxp3+ CD4+ Tregsが検出された。以上の、in vitroおよびin vivoにおける観察は、癌患者においてTregsをうまく制御することの重要性を示唆するものである。
  • 頼仲
  • 林田
  • 冨田
  • 池田
  • 春田
8月22日(金)

全体Meeting

  • 担当者:入江 厚
  • 論文:Chemokine-mediated rapid turnover of myeloid-derived suppressor cells in tumor-bearing mice.
    Sawanobori, Yasushi et. al.
    Blood 111: 5457-5466, 2008(Jun.)
  • 要約:腫瘍の増大には、これを促進する働きを持つCD11b+Gr-1+ミエロイド系細胞由来の抑制性細胞(myeloid-derived suppressor cell (MDSC))の、異常な増殖を伴う。しかし、腫瘍に伴い増加するMDSCの正体や、これらがどのように増殖・移動するのか、といったことはよくわかっていない。本研究で著者らは、腫瘍部位に存在するMDSCが、主に骨髄由来のCD11b+Gr-1hiLy-6Cintの表現系を持つ好中球とCD11b+Gr-1int/dullLy-6Chiのマクロファージであることを示した。予想外なことに、in vivoでの臭化デオキシウリジン(BrdU)標識と、マウスの並体結合実験(parabiosis)から、好中球と比較してマクロファージの方が速やかに腫瘍内に浸潤することが明らかとなった。CCR2を欠損させると、腫瘍内に主に浸潤する細胞がマクロファージから好中球に劇的に変化したが、この際、好中球はCXCR2リガンドとG-CSFを過剰に産生していた。以上より本研究では、担癌個体中のMDSCの正体と、ケモカインによるそのダイナミックな制御機構が明らかにされた。また、予想に反して、腫瘍の増大にはマクロファージは、あまり貢献しないことが明らかとなった。
  • 入江
  • 松永
  • 真崎
  • 福島
  • 今井
  • 井上
8月8日(金)
  • 担当者:林田 裕希
  • 論文:IFN-γ- and TNF-dependent bystander eradication of antigen-loss variants in established mouse cancers.
    Bin Zhang et al.
    J. Clin. Invest. 118(4): 1398-1404, 2008 (Apr.)
  • 要約:腫瘍は抗腫瘍免疫反応を誘導するが、時間が経過すると、腫瘍は進化し、免疫反応に直接関わる抗原自体の発現を減少させる(the loss of antigen)などの、様々なメカニズムによって免疫制御から逃れることができるようになる。抗原が欠損した変異体antigen-loss variants(ALVs) による免疫エスケープは、T細胞による癌免疫に対する障害の主なものである。しかしながら、腫瘍だけでなく腫瘍間質にも十分な量のCTLと抗原の発現があれば、癌は治療できる。本論文で著者らは、ALVsを含め、移植されたマウス腫瘍の除去にはCTLが産生するIFN-γとTNFが必要不可欠であることを示した。加えて、ALVsを除去するには、骨髄由来および非骨髄由来の間質細胞のどちらにもTNF受容体、IFN-γ受容体が発現している必要があることを示した。CTLが抗原を発現している腫瘍細胞をパーフォリンを介して死滅させるのには、IFN-γとTNFは必要なかったが、腫瘍間質を破壊するのには、腫瘍抗原特異的CTLがIFN-γとTNFを分泌する必要があることが強く示唆された。IFN-γとTNFが腫瘍間質に作用した結果として、ALVsが巻き添えを食う形で死滅すると考えられた。
  • 千住
  • 池田
  • 春田
  • 林田
  • 冨田
7月25日(金)
  • 担当者:今井 克憲
  • 論文:TNFR1 Signaling and IFN-γ Signaling Determine whether T Cells Induce Tumor Dormancy or Promote Multistage Carcinogenesis.
    Nele Muller-Hermelink et al.
    Cancer Cell 13: 507-518, 2008(June)
  • 要約:移植腫瘍に対して、CD4 T細胞はCTLよりもその抗腫瘍効果が強いといわれているが、自然発症腫瘍におけるCD4 T細胞の抗腫瘍効果のメカニズムに関しては未だ不明な点が多い。今回筆者らは、ウイルス由来腫瘍抗原に起因する多段階な発癌過程における、抗原特異的Th1細胞の効果について検討を行った。膵島に癌を自然発症するRIP1-Tag2トランスジェニックマウスに対して、Tag(SV40ウイルス由来癌抗原)特異的Th1細胞を養子免疫すると、このTh1細胞は癌周囲やドレナージリンパ節にhomingし、膵島を破壊せずに腫瘍細胞の増殖抑制、血管新生抑制を介した腫瘍抑制効果を示した。この腫瘍抑制効果は、INF-γ、TNF シグナルを介したものであった。しかし驚くべきことに、INF-γやTNF シグナルが欠如した状況では、このTag特異的Th1細胞は、逆に腫瘍細胞の増殖や血管新生を亢進させ、多段階な発癌を促進した。以上より、抗原特異的Th1細胞は、腫瘍の多段階発癌に直接関与している事が示された。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永
7月18日(金)

全体Meeting

  • 担当者:真崎 雄一
  • 論文:A Toll-like receptor 2-integrin β3 complex senses bacterial lipopeptides via vitronectin.
    Gisa Gerold et al.
    Nature Immunology 9 (7): 761-768, 2008 (July)
  • 要約:Toll-like receptor 2 (TLR2)は、bacterial lipopeptides (BLP)を認識し、炎症反応を引き起こす。しかし、TLR2が、どのような仕組みでBLBを認識しているかについて、その分子メカニズムは明らかになっていない。本論文では、BLPがヒトの血清中に存在するビトロネクチンと相互作用することにより、TLR2から認識されるようになることを明らかにしている。ビトロネクチンおよび、そのレセプターであるインテグリンβ3は、TLR2がBLPを認識し、ヒトの単球が活性化するうえで必要な分子であった。さらに、このことを裏付けるように、インテグリンβ3が欠損しているGlanzmann血小板無力症の患者から得た単球では、BLPに対する反応が、全くみられなかった。また、インテグリンβ3は、TLR2と複合体を形成するものの、BLPの刺激後、この複合体は解離することも明らかとなった。一方、インテグリンβ3とTLR2の協調的関係は、BLPに対してだけでなく、リポタイコ酸やザイモサンのような、TLR2の他のアゴニストに対する反応においても観察された。このように、インテグリンβ3とビトロネクチンは、TLR2のアゴニストに対する反応に深く関与していることが明らかとなった。
  • 頼仲
  • 林田
  • 冨田
  • 池田
  • 春田
7月11日(金)
  • 西村教授:理研国際シンポジウム報告会
  • 入江
  • 平田
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上