日程

Journal Club

Progress report

(8:30〜9:30)

(9:30〜12:30)

2008年(平成20年)

Group-1

Group-2
3月28日(金)
  • 担当者:福島 聡
  • 論文:TANK-binding kinase-1 delineates innate and adaptive immune responses to DNA vaccines
    Shizuo Akira et al.
    Nature 451: 725-729, 2008 (Feb.)
  • 要約:よく効くワクチンには、感染防御抗原だけでなく、アジュバント成分、すなわち自然免疫の活性化を引き起こして至適な免疫原性を示すために必須な物質も含まれている。DNAワクチンの場合、アジュバントの成分はプラスミドDNAだと思われているが、詳細はいまだ不明である。また、DNAワクチンがコードされている抗原に特異的なT細胞およびB細胞の応答をどのように惹起するのか、その細胞内および細胞間の自然免疫シグナル伝達経路はまだ明らかにされてはいない。今回in vivoの系を用い、IkBキナーゼであるTANK結合キナーゼ1(TBK1)が、DNAワクチンのアジュバント効果を仲介するとともに、マウスの免疫原性に必須であることが示された。プラスミドDNAによって活性化され、TBK1に依存的なシグナル伝達と、その結果生じるI 型インターフェロン受容体を介するシグナル伝達は、抗原特異的なBおよびT細胞の誘導に必要であり、この誘導には、Toll様受容体9(TLR9)または Z-DNA結合タンパク質1などの既知のCpG DNAセンサーを介する自然免疫シグナル伝達は必要ではなかった。さらに骨髄移植の実験から、造血細胞では、TBK1を介するシグナル伝達は抗原特異的な BおよびCD4+T細胞の誘導に極めて重要であるが、非造血細胞でのTBK1を介するシグナルはCD8+T細胞の誘導に必要であることが明らかになった。今回の結果は、DNAワクチンにより増強する免疫原性の発現において、TBK1がDNAによって活性化される自然免疫系のシグナル伝達を造血細胞と非造血細胞において別々に制御する、重要なシグナル伝達分子であることを示している。
  • 頼仲
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田
  • 春田
  • 池田
3月21日(金)
  • 担当者:横峰 和典
  • 論文:The contribution of transcription factor IRF1 to the interferon-γ-interleukin 12 signaling axis and TH1 versus TH-17 differentiation of CD4+T cells.
    Shin-ichi Kano, et al.
    Nature Immunology. 9: 34-41, 2008 (Jan.)
  • 要約:IL-12およびIFNは、Th1分化において重要な役割を担っている。IFNγはIL-12レセプターの発現を誘導するとされるが、IL-12レセプターの発現メカニズムは明らかになっていない。Kanoらは、転写因子であるinterferon regulatory factor 1 (IRF1) が、IFNγシグナル伝達の下流で転写誘導され、IL-12レセプターのサブユニットであるIL-12Rβ1の遺伝子の転写を誘導し、Th1分化に必須の役割を果たしていることを示した。IRF1はCD4陽性T細胞のIL12rβ1遺伝子プロモーターに直接作用し、転写を誘導していた。IL-12Rβ1はIL-12とIL-23の共通のレセプターサブユニットであり、いずれもIL-12Rβ1を介してシグナルが伝達されるが、IRF1によるIL-12Rβ1の発現誘導は、IL-12によるIFNγの誘導には必須であるが、IL-23によるIL-17の誘導には必須ではなかった。これらの結果より、IL-12シグナル伝達とIL-23シグナル伝達で、必要とされるIL-12Rβ1発現レベルの閾値が異なることが示唆された。
  • 入江
  • 平田
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上
3月14日(金)

全体Meeting

  • 担当者:松永 雄亮
  • 論文:Apoptosis regulators bim and fas function concurrently to control autoimmunity and CD8(+) T cell contraction.
    Weant AE, et al
    Immunity 28: 218-30, 2008 (Feb.)
  • 要約:成体期においては、細胞増殖と細胞死のバランスによってリンパ球の数は一定に保たれている。内因性細胞死経路におけるアポトーシス促進タンパク質であるBimまたは外因性細胞死経路で働く腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーに属するFasの変異により、遅発性自己免疫の発症、ウイルス感染時における抗原特異的CD8+T細胞応答の増強が引き起こされる。しかしながら、これら変異マウスにおける増強されたウイルス特異的免疫応答は時間が経つにつれて正常マウスと同程度にまで減弱する。今回、著者らはBimとFasの二つの遺伝子機能を同時に欠損させることにより、相乗的なリンパ球ホメオスタシスの破綻、自己免疫の早期発症が起こること、抗ウイルス免疫応答の減弱が臓器特異的に阻止されることを示した。LCMV特異的免疫反応を定量したところ、ダブルミュータントマウスでは野生型マウスの100倍以上の抗原特異的メモリーCD8T細胞がリンパ節に存在していた。これらの知見により、複数の細胞死経路の機能が協調して自己免疫の予防およびT細胞反応の減弱に関わっていることが示された。

  • 千住
  • 春田
  • 池田
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田
3月7日(金)
  • 担当者:林田 裕希
  • 論文:Intercellular Adhesion Molecule-1-Dependent Stable Interactions between T cells and Dendritic Cells Determine CD8+ Tcell Memory
    Alix Scholer et al.
    Immunity 28: 258-270, 2008(Feb.)
  • 要約:細胞傷害性免疫反応が開始されるためには、ナイーブCD8+T細胞と樹状細胞の直接的な相互作用が必要である。リンパ節の多光子イメージングによって、プライミングの際、ナイーブCD8+T細胞(CTL)は多数の樹状細胞と短時間(分単位)の接触行った後、引き続き一つの樹状細胞と長時間(時間単位)の抗原特異的結合を行っていることが分かっている。著者らは成熟樹状細胞のIntercellular Adhesion Molecule-1(ICAM-1)の発現が、長時間持続するCTLとの結合には必須であるが、短時間の抗原特異的相互作用には必要ではないことを示した。連続的な短時間の樹状細胞−CTL接触は、免疫後数日間で、CTLの早期活性化、増殖、エフェクターCTLへの分化を引き起こした。しかし、ICAM-1欠損成熟樹状細胞では、CTLが産生するIFNγ量が減少し、2週間後にはCTLクローンは消失し、効果的なプライミングが完全には誘導できなかった。加えて、Icam1-/-マウスは、再刺激に反応できなかった。著者らは、ICAM-1による成熟樹状細胞とナイーブCTLの長時間の接触が、活性化CTLの寿命とeffectiveメモリーCTLの確立を決定すると結論付けている。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永

2月29日(金)
  • 担当者:頼仲 玉珍
  • 論文:The Cytosolic Sensors Nod1 and Nod2 Are Critical for Bacterial Recognition and Host Defense after Exposure to Toll-like Receptor Ligands
    Yun-Gi Kim et al.
    Immunity 28: 246-257, 2008(Feb.)
  • 要約:細胞質のセンサーNod1とNod2およびTLR(Toll-like receptor)は、微生物刺激に応答して防御シグナル伝達系を活性化させる。しかし、全身性細菌感染におけるNod1やNod2、あるいはそれらとTLRとの相互作用の役割については、十分に解明されていない。本研究は、微生物リガンドへ暴露されることによってTLR感受性をなくしたマクロファージやマウスでも、Nod1とNod2は反応性を保存していることが明らかにされた。さらに、Nod1とNod2を介したシグナル伝達や遺伝子発現は、TLR応答性のないマクロファージで増強されていた。また、一度TLRリガンドで処理したマクロファージでは、細菌感染によって誘導される自然免疫反応は、ナイーブなマクロファージでは見られないNod1とNod2、およびそれらのアダプター分子RICKへの依存性が認められた。さらに、あらかじめリポ多糖類、あるいは大腸菌で刺激をしたマウスでは、リステリア菌による全身感染時の細菌の排除に、Nod1とNod2が重要な役割を果していた。以上よりNod1とNod2は、TLR刺激後の、感染性微生物の認識と宿主の生体防御にとって重要であることが示された。
  • 頼仲
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田
  • 春田
  • 池田

2月22日(金)
  • 担当者:池田 徳典
  • 論文:The inhibitory cytokine IL-35 contributes to regulatory T-cell function.
    Collison LW et al.
    Nature 450: 566-9, 2007(Nov.22)
  • 要約:抑制性T細胞(Treg細胞)を巧みにコントロールすることが、免疫療法にとって重要な鍵となるが、その制御性メカニズムに関与するような特定の分子の存在については良くわかっていない。筆者らは、IL-27β鎖であるEpstein-Barr-virus-induced gene3(Ebi3)とIL-12α鎖であるp35が、C57BL/6マウスのエフェクターCD4T細胞(Teff細胞)では低発現なのに対し、Foxp3Treg 細胞では高発現しており、Ebi3-IL12αのヘテロダイマーが、Foxp3Treg細胞から分泌されていることを見出した。また、Ebi3とIl12aのreal-time PCRによるmRNAの定量では、Teff細胞と共培養したTreg細胞において、その増加が認められた。In vitroでは、Ebi3-/-マウスとIL12a-/-マウスのTreg細胞の抑制性効果が減弱しており、in vivoでは、このTreg細胞を炎症性腸疾患モデルマウスに投与した場合、wild typeマウスのTreg細胞投与群と比較すると、その改善が弱かった。これらの特徴は、従来のIL-12 familyのサイトカインの特徴と異なっており、Ebi3-IL12αのヘテロダイマーを形成するサイトカインをIL-35と命名した。また、IL-35をナイーブなT細胞にレトロウイルスベクターを用いて発現させた場合、T細胞は抑制性の活性を獲得し、recombinant IL-35を投与すると、T細胞の増殖が抑制された。以上より、IL-35はTreg細胞によって産生される新規の抑制性サイトカインであり、Treg細胞が免疫抑制の効果を最大限に発揮するために必要なサイトカインである可能性が示唆された。
  • 入江
  • 平田
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上

2月15日(金)

全体Meeting

  • 担当者:入江 厚
  • 論文:A Single Naive CD8+ T Cell Precursor Can Develop into Diverse Effector and Memory Subsets.
    Christian Stemberger et al.
    Immunity 27: 985-997, 2007(Dec.)
  • 要約:抗原に出会うと、ナイーブCD8T細胞は活性化されて増殖し、全く異なる様々なサブセット、たとえば寿命の比較的短いエフェクター細胞や、中枢・エフェクターメモリー細胞などに分化する。こうしたサブセットの多様性が、どのようにして生ずるのかは今のところよくわかっていないが、各サブセットの先駆細胞が分化の初期に受けたシグナルの質・量の差が主要な決定因子ではないかと示唆されている。本研究で著者らは、1個の抗原特異的なナイーブT細胞をレシピエントマウスに導入し、これを免疫することにより、増殖した娘細胞を回収できることを示した。この実験方法により、著者らは様々なサブセットに分化した広範な種類のエフェクターやメモリー細胞が、たった1個の先駆細胞から分化してくることを証明した。おもしろいことに、1個の細胞から生じたサブセットの分化のパターンは複数クローンの先駆細胞から生じたものと良く似ていたが、免疫の方法により、そのパターンは変化した。これらの結果は、各サブセットへの分化は、増殖期にその種類と量が決定されることを意味する。

2月8日(金)
  • 担当者:福島 聡
  • 論文:T cell sensing of antigen dose governs interactive behavior with dendritic cells and sets a threshold for T cell activation.
    Sarah E Henrickson et al.
    Nature Immunology Published online:2008(20 Jan.)
  • 要約:リンパ節にホーミングした後、CD8陽性T細胞はDCによって三つの相を通して活性化される。第一相においてT細胞はDCと短く連続的に数時間接触するが、第二相においては、その相互作用は安定化する。この論文では、第一相にかかる時間やT細胞の活性化動態が、一個のDCあたりのペプチドMHC複合体(pMHC)の数やリンパ節一個あたりの抗原提示細胞の数に反比例することを見いだした。T細胞を活性化するにはごく少量のpMHCで十分であるが、その抗原量が最低基準以下であると、T細胞の活性化も第二相への移行もおこらない。すなわち、第一相においてT細胞が抗原量を「測定」することでその後につづく免疫反応を決定しているのである。
  • 千住
  • 春田
  • 池田
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田

1月25日(金)
  • 担当者:今井 克典
  • 論文:Bv8 regulates myeloid-cell-dependent tumour angiogenesis.
    Farbod Shojaei at al.
    Nature 450: 825-834, 2007(Dec.)
  • 要約:腫瘍の血管新生を促進させる物質としてVEGFが知られているが、骨髄系細胞もまた腫瘍の血管新生を調節していることが知られている。今回著者らは、EG-VEGFのhomologueである血管新生ペプチドBv8が、骨髄系細胞の末梢への動員を介して腫瘍の血管新生を調節していることが示された。Bv8は骨髄に局在して発現しているが、マウスに腫瘍を移植すると骨髄のCD11b+Gr1+ cellにおけるBv8の発現が上昇し、CD11b+Gr1+cellは末梢へ動員、腫瘍へ浸潤して血管新生を促進させる。このBv8を調節しているのが、腫瘍/腫瘍間質より分泌されることが知られているG-CSFであった。Bv8に対する抗体は骨髄から末梢血、腫瘍へのCD11b+Gr1+ cellの動員を減少させ、特にanti-Vegf Ab(アバスチン)やcytotoxic agentとの併用により著明な腫瘍抑制効果を示した。
  • 福島
  • 今井
  • 井上
  • 松永

1月18日(金)

全体Meeting

  • 担当者:原尾 美智子
  • 論文:Endothelin B receptor mediates the endothelial barrier to T cell homing to tumors and disables immune therapy
    Ronald J Buckanovich et al.
    Nature Medicine 14: 28-36, 2007(Jan.)
  • 要約:癌抗原ワクチンには十分な免疫原性があるにもかかわらず、多くの場合効果は顕著ではない。この論文は腫瘍血管内皮細胞がT細胞のホーミングを妨げ、さらには、腫瘍免疫療法の効果を減弱していることを報告したものである。ヒト卵巣癌組織を用いて、腫瘍血管内皮細胞の解析を行い、腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)の存在の有無と関連する遺伝子をcDNAマイクロで調べたところ、ETBRの高発現とTILの腫瘍周囲への浸潤低下が相関していた。ETBRの阻害剤であるBQ-788はin vitroでT細胞のヒト血管内皮細胞への接着を増加させ、この接着はICAM-Iと一酸化窒素に依存していた。マウスでは、BQ-788でETBRを中和することによってT細胞の腫瘍へのホーミングが増強した。このホーミングにはICAM-1が必要であり、全身性の抗腫瘍免疫応答には影響を及ぼさずに、ホーミング増強によりin vivoで効果のなかった免疫療法の抗腫瘍効果が観察された。このようにETBRを介したT細胞の腫瘍へのホーミング抑制を改善することにより、腫瘍免疫療法の有効性を高めることが可能と思われる。
  • 頼仲
  • 横峰
  • 原尾
  • 林田
  • 春田
  • 池田

1月11日(金)
  • 担当者:平田 真哉
  • 論文:A dominant function for interleukin 27 in generating interleukin 10-producing anti-inflammatory T cells
    Amit Awasthi et al.
    Nature Immunology 8(12): 1380-1389, 2007(Dec.)
  • 要約:Foxp3を発現するTreg細胞は、免疫系の恒常性(homeostasis)の維持に重要であることが示されてきた。一方で、免疫抑制性のサイトカインであるIL-10を分泌して、Foxp3を発現しないTr1細胞(IL-10+, Foxp3-)もまた抑制性T細胞として知られている。しかしながら、これまで、このIL-10を産生する抑制性T細胞が誘導されるメカニズムは十分には解明されていなかった。今回の論文で、Foxp3+ Treg細胞が樹状細胞(DC)に、IL-27の産生を誘導し、このIL-27がnaive CD4+T細胞からIL-10産生性Tr1細胞への分化を誘導することが見出された。さらに、TGF-βはIL-27によるIL-10産生Tr1細胞の誘導を増幅することも分かった。以上のことから、IL-27とTGF-βは、IL-10産生Tr1細胞を誘導することが示され、今後のTr1細胞を介した免疫抑制療法の開発研究に重要な情報をもたらすと考えられる。
  • 入江
  • 平田
  • 松永
  • 福島
  • 今井
  • 井上