日程
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Journal Club
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Progress report
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(8:30〜9:30)
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(9:30〜12:30)
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2007年(平成19年)
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Group-1
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Group-2
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9月28日(金)
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- 担当者:原尾 美智子
- 論文:Cross-competition of
CD8+T
cells shapes the immunodominance hierarchy during boost
vaccination
Wolfgang Kastenmuller et al.
J.Exp.Med. 204 (9): 2187-2198,
2007(Sep)
- Multiple pathogen-derived epitopes に対するCD8+T細胞の応答は、immunodominance hierarchy patternを形成するという特徴を持っている。この現象が生じる機序についてcross-competitionが提唱されている。これは、CD8+T細胞が抗原提示細胞のエピトープへのアクセスに関して競合して、誘導されるT 細胞の数に変化が生じるという現象である。ワクシニアウイルスの感染モデルを用いた系では、T 細胞のcross-competitionはブーストワクチン中に高率に発生し、そのために再感染時にimmunodominance hierarchyが形成される。この競合はプライミングには影響をあたえず、免疫のルートにも関連しないが、感染した抗原提示細胞にウイルス抗原が発現するタイミングに依存し、late viral proteinsから誘導されたepitopeを認識するT細胞の増殖応答が弱いことに起因する。今回、初めてウイルス感染モデルを用いてT細胞のcross-competitionの重要性を示した。以上の情報は既存の抗原に対するブーストワクチンの改善のための、新しい戦略のベースとなることが考えられる。
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9月21日(金)
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- 担当者:井上 光弘
- 論文:Toll-like receptor
4-dependent contribution of the immune system to
anticancer chemotherapy and radiotherapy.
Lionel Apetoh et al.
Nature Med. 2007(Aug.)
- 要約:放射線治療および化学療法は重要な癌治療法である。本論文は、これらの処置を受けた腫瘍細胞に由来する蛋白質によるTLRシグナルが、樹状細胞(DC)のcross
presentationを調節し、抗腫瘍免疫を増強することを報告している。腫瘍細胞が放射線や抗癌剤に暴露されるとhigh-mobility-group
box1(HMGB1)alarmin
proteinが放出される。HMGB1はDCに発現しているTLR4に結合し、MyD88を介してシグナルが入り、DCによる抗原提示を促進する。著者らはマウスにおいて放射線照射あるいは抗癌剤処理された腫瘍細胞と培養したDCが、これらに暴露されていない腫瘍細胞と培養したDCと比較して、より強い抗腫瘍免疫を誘導することを示した。しかし、この効果はTLR4-/-マウス由来のDCでは認められず、治療された腫瘍細胞からのHMGB1の放出を抑制した場合にも効果は認められなかった。さらに処理された癌細胞のマウスin
vivo接種により、腫瘍の増殖抑制効果が認められ、その効果はTLR4あるいはHMGB1を抑制することにより減弱した。またヒトの乳癌術後に化学療法を施行された患者で、HMGB1との結合性が減弱するTLR4多型を有するものは有意に再発率が高かった。以上より癌の放射線あるいは化学療法の効果の一部が、抗腫瘍免疫により担われている可能性が示された。
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9月7日(金)
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- 担当者:横峰 和典
- 論文:Interleukin 1β and 6 but
not transforming growth factor-β are essential for the
differentiation of interleukin 17-producing human T
helper cells.
Acosta-Rodriguez EV. et al.
Nat. Immunol.
2007(Aug.)
- 要約:IL-17産生CD4陽性ヘルパーT細胞(TH-17細胞)は宿主防御と自己免疫を結びつける細胞である。マウスにおいては、TH-17細胞の分化にはTGF-βとIL-6と転写因子であるROR-γtの発現が必要である。本論文では、ヒトのナイーブなCD4陽性T細胞は、ROR-γtの発現とTH-17細胞への分化はIL-1βによって形成されIL-6によって増強されるが、TGF-βとIL-12によって抑制されることを明らかにした。細菌による刺激では活性化された単球由来の樹状細胞ではなく、単球と古典的な樹状細胞が効果的にTH-17細胞のプライミングを行うことができ、この機能は抗原提示細胞が分泌するIL-1βとIL-6と相関していたが、IL-12とは相関していなかった。これらの結果は、サイトカインと抗原提示細胞と細菌の構成物が、ヒトのTH-17細胞の分化を促進することを明らかにし、ヒトとマウスにおいてTH-17細胞の分化に重要な相違があることを示したものである。
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8月31日(金)
全体 Meeting
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- 担当者:西村 泰治 教授
13th
International Congress of Immunology (RIO DE JANEIRO,
BRAZIL) 報告会
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8月17日(金)
全体 Meeting
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- 担当者:松永 雄亮
- 論文:Reciprocal TH17 and
regulatory T cell differentiation mediated by retinoic
acid.
Mucida D et al.
Science 317(5835): 256-260,
2007(July)
- 要約:TGF-βはナイーブT細胞に作用して自己免疫を抑制する制御性T細胞(Treg細胞)の分化を誘導する。しかしながらIL-6存在下では、TGF-βはナイーブT細胞から自己免疫や炎症反応を促進するIL-17産生ヘルパーT細胞(TH17細胞)への分化を誘導する。TGFβがこのような異なる働きをもつT細胞サブセットを分化誘導する機序は解明されていない。本論文ではビタミンAの代謝産物であるレチノイン酸がTGF-β誘導性のT細胞分化において重要な調節因子であることが示された。TH17細胞誘導条件下(TGFβ、IL-6存在下)において、レチノイン酸はTH17細胞への分化およびRORγtの発現を抑制した。また、TH17細胞誘導条件下においてレチノイン酸がTreg細胞への分化を促進したことより、IL-6とTGFβにより方向づけられたTH17細胞分化を、レチノイン酸が再度Treg細胞分化に方向づけ直す可能性が示唆された。これらの知見はレチノイン酸が炎症誘発性免疫と抗炎症免疫とのバランスを制御していることを示唆するものである。
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8月10日(金)
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- 担当者:林田 裕希
- 論文:Altered recognition of
antigen is a mechanism of CD8+ T
cell tolerance in cancer
Srinivas Nagaraj et al.
Natue Med. 13(7): 828-835,
2007(July)
- 要約:骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSCs)による抗原特異的CD8+T細胞への免疫寛容は、腫瘍が免疫から逃れる主なメカニズムの1つである。著者らはマウスin
vivoモデルにおいて、MDSCsが、T細胞レセプター(TCR)-CD8複合体におけるチロシンのニトロ化を通して、特異的ペプチド・MHCの複合体(pMHC)とCD8+T細胞との結合を直接的に障害することを示した。TCR-CD8のニトロ化により、CD8+T細胞はpMHCと結合できなくなり、特異的ペプチドに反応できなくなるが、非特異的な刺激に反応する能力は維持していた。TCR-CD8のニトロ化は、MDSCsがCD8+T細胞との直接的なcell-cell
contactの間に、活性酸素種(ROS)とペルオキシ硝酸塩を過剰産生することによって引き起こされる。分子モデルは、TCR-CD8の立体構造の柔軟性とpMHCとの相互作用に重要な特定部位がニトロ化されていることを示唆している。これらのデータは、これまで明らかになっていなかった、癌におけるT細胞寛容のメカニズムを示した。それはMDSCsが蓄積するような多くの病的状況にも当てはまる。
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8月3日(金)
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- 担当者:頼仲 玉珍
- 論文:Multifunctional TH1 cells
define a correlate of vaccine-mediated protection against
Leishmania major.
Patricia A Darrah et al.
Nature Med. 13(7): 843-850,
2007(July)
- 要約:CD4+T細胞は、特定のサイトカインの生産を通して、多様な病原体に対する感染免疫を誘導する。しかし、CD4+T細胞が産生するサイトカインの種類が余りにも多様であるために、ワクチン接種後の感染免疫の成立に重要な反応を特定することは非常に困難であった。この論文では、multiparameter
flow
cytometryを利用して、種々の特異的ワクチン接種によるLeishmania
major(LM)感染症への予防効果が、IFNγ+IL-2+TNFを同時に産生するCD4+T細胞の誘導効率と相関することが示された。興味あることに、LM感染免疫を誘導する全てのワクチンは、CD4+T細胞に大量のIFNγ産生を誘導する点で共通していた。以上の結果は、ワクチンの効果がCD4+T細胞が産生するサイトカインの種類によって決定されうることを示し、TH1誘導型ワクチンの開発に有用な情報を提供するものと期待される。
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7月20日(金)
全体 Meeting
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- 担当者:池田 徳典
- 論文:TRAIL limits excessive
host immune responses in bacterial meningitis.
Olaf Hoffmann et al.
J. Clin. Invest. 117(7): 2004-2013,
2007(July)
- 要約:TRAILは抗腫瘍効果という本来の役割とは別に、宿主の免疫反応において、重要な調節機能を有している。我々は、マウスの実験的細菌性髄膜炎モデルを用いて、内因性のTRAILやrecombinantTRAIL(rTRAIL)の抗炎症効果について検討した。TRAIL
KO マウスにTRL2
ligandである肺炎球菌の細胞壁を髄腔内へ投与した場合、wild
typeマウスの場合と比較して、炎症反応の遷延や臨床症状の増悪、海馬におけるアポトーシスの増加が確認された。一方、TRAIL
KOマウスの髄腔内にrTRAILを投与した場合や、TRAIL
KOマウスにwild
typeマウスの骨髄細胞を移植したキメラマウスでは、これら上記の病態の改善が認められた。これらの結果から、TRAILが白血球浸潤を調節する役割を果たしている可能性が考えられた。
重要なことに、実験的髄膜炎を誘導したwild
typeマウスにrTRAILを髄腔内投与した場合においても、炎症反応やアポトーシスの減少が確認された。さらに細菌性髄膜炎の患者において、髄腔内TRAILの合成が増加していることが示された。以上より、急性の中枢神経炎症反応において、TRAILが抑制的な調節を担っている可能性が示された。髄膜炎時の炎症反応の調節や神経細胞死を減少させるといったTRAILの効果を、侵襲的な感染症における抗炎症作用として利用できる可能性がある。
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7月13日(金)
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- 担当者:入江 厚
- 論文:Cyclic adenosine
monophosphate is a key component of regulatory T
cell-mediated suppression
Tobias Bopp et al.
J.Exp.Med. 204 (6): 1303-1310,
2007(May)
- 要約:制御性T細胞(Treg細胞)は、胸腺由来のT細胞サブセットの1つであり、自己反応性T細胞を制御することにより、末梢トレランスの維持に重要な役割を果たしている。Treg細胞による免疫抑制は、細胞どうしの接触を必要とするが、その分子機構はよくわかっていない。環状アデノシン一リン酸(cAMP)は、T細胞の増殖とインターロイキン2産生に対する強力な阻害剤であることが知られているが、著者らは、Treg細胞が高レベルのcAMPを産生することを見出した。Treg細胞と共刺激すると、通常のT細胞内のcAMP量は激増した。さらに、Treg細胞と通常のT細胞とは、細胞接触によりギャップ結合を形成し、連絡し合うことが示された。Treg細胞の抑制活性は、cAMPアンタゴニストやギャップ結合阻害剤によって消失し、さらにギャップ結合阻害剤処理は、細胞接触を介したcAMPの通常のT細胞への移入を阻害した。以上より、cAMPはTreg細胞による免疫抑制に不可欠であり、ギャップ結合を経由して細胞膜を通過していくことが示唆された。したがって、Treg細胞は意外にも、よく知られているギャップ結合を介した細胞間物質輸送機構を利用してcAMPを送り込み、免疫抑制ネットワークを制御していると考えられた。
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7月6日(金)
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- 担当者:平田 真哉
- 論文:TH17 cells contribute to uveitis and
scleritis and are expanded by IL-2 and inhibited by
IL-27/STAT1
Ahjoku Amadi-Obi et al.
Natue Med. 13(6): 711-718,
2007(June)
- 要約:Th17細胞は、齧歯類の自己免疫疾患モデルにおいて、その関与が示唆されている。今回の論文では、ヒトのブドウ膜炎、強膜炎においても、Th17細胞が関連していることが明らかとなった。そして、そのヒトTh17細胞は、(1)末梢血にも存在している、(2)
IL-2で増殖する、(3)
IFN-γにより抑制されるなど、齧歯類における報告と同様の性格を示した。また、網膜神経節と光受容体細胞において、IL-27が発現していて、この発現はIFN-γによって産生が増加し、さらには、IL-27はTh17細胞の増殖を抑制していることが分かった。以上のことから、ヒトの自己免疫疾患の中にもIL-17を産生するTh17
細胞が関与しているものがあり、さらにIFN-γとIL-27をTh17による慢性炎症の治療に利用できる可能性を示唆している。
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